(2013/10/19)本当の百年に一度の危機というものをきちんと示しておきたいと思います











おはようございます。


2013年10月の筆者提供の歴史に関するブログ配信記事です。


リーマン・ショックや欧州債務危機を100年に一回の危機などと喧伝する向きに本当の百年に一度の国家的危機というものは如何なるものか提示しようと思い立ちまして筆を取りました。

時は約百年前の1904年日露戦争旅順艦隊撃滅のための高地要塞攻略戦いわゆる二百三高地の戦いです。


海軍はロシア東洋艦隊の根拠地である旅順港を封鎖することに失敗し、洋上決戦も不発に終わり艦隊を繰り出して旅順港に押し込めているに過ぎない状態でした。



しかしそんな中本気になったロシア側の最新艦隊であるバルティック艦隊の日本到着を数ヶ月後に控え、とにかく先に旅順艦隊を潰しておく必要に迫られました。

バルティック艦隊との決戦の前に、当面の相手である旅順艦隊を始末しておかなければ日本の制海権は失われます。


制海権を失えば日本本土からの補給が途絶え、朝鮮半島満州に展開した陸軍30万人の将兵は飢えて死ぬのを待つばかりになってしまいます。

ここに旅順軍港を背後に持つ旅順要塞の攻略が日本軍にとっての最重要課題となりました。



しかし、旅順攻略に割いている乃木大将率いる第三軍を早く満州に北上させたい満洲軍参謀本部と、戦費調達のため早々に華々しい戦果が欲していた大本営と、旅順艦隊を洋上に誘い出すため早く封鎖を解きたかった海軍聯合艦隊が、三者三様に好き勝手言うもので、正攻法で確実に攻めるという乃木大将以下参謀部の立てた塹壕戦と坑道爆破による漸進作戦はあっけなく却下され、性急な突撃作戦に頼ることとなったのです。


結果ロシア軍の設置しているコンクリート要塞の機関銃の餌食となり10万人とも言われる将兵の損害を被りました。

第三軍の乃木大将には取りうる手段も検討する時間も十分に与えられなかったわけで、国家規模的な中間管理職の悲哀と言えましょう。



乃木大将に与えられた権限は部下に死ねといって突撃させることのみと言っても過言ではなかったと思います。


ようやく単純突撃の愚に気づき遠回りながら要塞側面の比較的防禦の薄い二百三高地を目標に変更し、そこまで補給を伸ばせる目処が付き最後の決戦でようやく山頂を占領し、旅順港を見渡し湾内艦隊に対し、遠くから運んできた榴弾砲を浴びせて撃滅します。

 

こうして旅順要塞攻防戦は終わりました。

その後、明治天皇崩御の際に乃木大将夫妻は自刃します。

先の日露戦争の攻防戦で夫妻の息子2名も亡くした夫妻にとってみれば、胸の支えが取れたのかもしれません。

昭和天皇は学習院の院長だった乃木大将に深い薫陶を受けたと語りました。

雨の日に登校する時は馬車に乗らずコートを着て歩くように、着物の裾が破れたら、つぎを当てておけば良いと教えられたそうです。

かようなことに思いを致しますに、100年に一度の危機とは、好むと好まざるに関わらず、当時欧米列強と何とか伍していくために日本がとらなければならなかったこのような国家的危機のようなものを言うのであって、自分でリスクを判断管理することを怠り格付機関に騙されたと騒ぐ世界中の自称プロ投資家の損失などと比べるものではないと思うのです。

零細投資家の筆者からは以上です。

(平成25年10月19日)

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