(2020/03/24)【感想】100日後に死ぬワニという作品を見て宇宙戦艦ヤマトを思い出した話です

「100日後に死ぬワニ」1日目より

おはようございます。

「100日後に死ぬワニ」という短編漫画の連載が、ついに終わり、予定されていた主人公ワニ君の「死」が描かれました。

これは、予定された結末に向けたプロットに、否が応でも読者を引き込む、素晴らしい表現手法だと思います。

昔、実はテレビ番組連載としては、打ち切りになったという、「宇宙戦艦ヤマト」という作品がありましたが、この世界観も、毎回お話の終わりに、「地球滅亡の日まであと365日!」という文字を、ナレーションがわざわざ2回繰り返すという、実に恐ろしい設定でしたが、それでも、なんとか目指す星イスカンダル星まではたどり着くまで連載は続きました。

実は、打ち切りになってしまったが故の不人気であったこの宇宙戦艦ヤマト、版権が安いという理由で深夜枠や地方放送局で繰り返し再生放送された結果、なんと逆にじわじわと人気が出て、そして映画化に至るという、うそのような本当の話があります。

まるで、ゴッホの絵が、ゴッホが生きているうちに評価する人が現れなかったというような話に似ていて面白いと思います。

さて、このように、お話として設定された「終わり」に向かって進んで行くというのは、作者(作り手)と読者(受け手)が一体となって進む楽しさがあります。

もちろん、「地球滅亡の日」や「ワニ君の死ぬ日」という大枠は決まっているけれども、その日がどのように来るかは最後までわからないので、いつの間にかお話の中に没入して毎日の更新もしくは毎週の放映が楽しみになってくるわけですが、この点、どのような結末が用意されているか作者の自由である新聞小説などとは違った面白さがあります。

かつて、新聞小説としてかなりの人気を博した「氷点」という作家三浦綾子さんの小説がありますが、この主人公である辻口陽子さんがあまりに不憫であることから、作者の元には、「これ以上陽子さんを虐めないで!」という嘆願書が来たということです。

また、魅力ある主人公達や名脇役達を、これでもかという風に惜しげもなく重要な戦役や戦闘で殺してしまう、別名皆殺し作家、死神と呼ばれる「銀河英雄伝説」の作者田中芳樹先生のような方もおられまして、田中先生の方は、読者の助命嘆願がいくらあっても死ぬときは死ぬものだと宣言されております。

この点、読者と作者が同じ方向を向いて物語が進行していくという、今回の100日後に死ぬワニ、の短編漫画は、百人一首にも似たような、100話で一つのワニ君の人格と周りの人たちの優しさを描き出した作品として、筆者などの中年の心にも、非常に響いた作品でした。

また、このような面白い同時代的表現作品が出てくるといいなと思います。

銀英伝にしろ、宇宙戦艦ヤマトにしろ、昔の昭和の表現作品の世界観は、100億人単位で人が死んだり、地球という惑星そのものが滅亡するという前提から始まったりと、それはもう遠慮なしにぶっ飛んだものであり、そうした世界観を許して作品表現手段として愛でてくれた、当時の読者(小学生だった筆者も含む)の理解力と合わせて、大変懐かしく感じる、そんな令和の昼下がりでした。

こちらからは以上です。

(2020年3月24日 火曜日)