北九州市のデータセンター

北九州市若松区のひびきの小学校隣接地における大規模データセンター(DC)建設計画の紛糾は、単なる企業誘致の失敗ではなく、長年にわたる都市計画の整合性欠如と行政の不作為が招いた構造的人災である。そもそも同校が位置する「ひびきの北」地区は、北九州学術研究都市の「大学・関連施設地区」として位置づけられた準工業地域であり、本来は研究機関や産学連携施設を誘致すべき産業空間であった。しかし市は、周辺宅地開発に伴う急激な児童増への見通しを誤り、住宅専用地区内に十分な教育用地を確保しないまま、遊休化していた準工業地域内の市有地へ2017年に同校を新設するという場当たり的な転用を行った。
本来、産業用地内に児童1300人規模のマンモス校を立地させた時点で、行政には周辺環境を教育施設に適合させる計画変更の責務が生じていたはずである。ところが市は、隣接する約6ヘクタールの市有地について、用途地域の見直しや地区計画による高さ・排熱・騒音等の厳格な建築制限を課すことを怠った。その結果、2023年に外資系事業者へ同用地を売却し、受電容量120メガワット、高さ約42メートルに及ぶ超大型DCの立地を許すこととなった。建築基準法上は準工業地域内の適法な開発であっても、24時間稼働の冷却設備や非常用発電機を備える巨大インフラ施設と小学校の隣接は、都市計画上のゾーニングの趣旨に真っ向から反する。
すなわち本件の本質は、人口推計の甘さから本来不適地である産業区画に小学校を押し込んだ「教育・宅地開発行政の妥協」と、その後の環境変化を無視して旧来の産業誘致枠組みのまま市有地を切り売りした「経済・都市計画行政の縦割り」という二重の怠慢にある。土地所有権を手放した後に住民の反発を受けて協議会を設置する市の後手対応は、自らが招いたゾーニング破綻の弥縫策に過ぎず、都市マスタープランの規律と教育環境保護を自ら放棄した行政の責任は極めて重い。