北九州市を分割せよ
私は北九州市八幡東区に生まれ育った52歳である。かつて鉄の街として日本を支えた故郷の現状を見るにつけ、揺るぎない確信に至った持論がある。1963年に誕生した政令指定都市・北九州市は、今こそ速やかにその役割を終え、もとの門司・小倉・若松・八幡・戸畑の「五市」へと戻るべきだ。
高度成長期の「巨大化こそ正義」という神話はすでに崩壊した。人口減少社会を食い止め、住民一人ひとりに寄り添うきめ細かい地方行政を行うためには、政令指定都市という肥大化した枠組みでは不十分であり、むしろ地域の活力を奪う害悪でしかない。かつて合併の大義名分とされた統一した行政機能や事務の効率化など、現代においてはAIでほぼ代替できる。もはや巨大な市役所を維持するために、各地域の独自性を犠牲にする理由はないのだ。
今なすべきは、五つの街に5人の市長を誕生させ、互いに知恵と手腕を競い、激しく切磋琢磨させることである。我が八幡には八幡の、他の四市にはそれぞれの歴史と誇りがある。行政単位を小さくし、権力を現場へ引き戻すことで初めて、市民の切実な声と熱意がダイレクトに政策へ反映される。真に大事なのは、この徹底したローカリズムと、自分たちの街を自ら動かすという市民の情熱だ。この熱量の爆発こそが街の魅力を蘇らせ、人口増加を達成する唯一の原動力となる。
目先の効率や現世利益ばかりを追求し、結果として地域の個性を奪い、人を減らしていくこの馬鹿な世界に、私たちは明確な処方箋を示さなければならない。統合や合理化といった冷徹な処理はAIに任せ、人間は人間らしく、郷土への愛と泥臭い熱意でコミュニティを動かすのだ。かつて五市合併という前例なき挑戦に踏み切ったこの北九州の地が、今度は未来を見据えて「五市への回帰と分立」という歴史的英断を下す。それこそが、閉塞感に喘ぐ地方と縮みゆく日本社会を根底から覆し、真の再生へと導く最も力強い狼煙となるはずだ。
