AIとは対話できない

「AIが広がれば、人間の能力差なんてそのうち意味がなくなる」とよく言われますが、本当にそうなのかな、と私は思っています。少なくとも今の対話型AIの使われ方を見ていると、例えば研究の世界では、むしろ逆ではないか、というのが率直な実感です。
たしかに、AIが適切に運用される世界や、限定された局面では、そういう側面もあるのだと思います。人間が細かく考えなくても、AIがかなりの部分を代わりにやってくれる場面は、これから確実に増えるでしょう。
ただ、少なくとも今主流の対話型AIについて言えば、私はまだまだ人間側の能力はかなり重要だと思っていますし、むしろその影響は拡大していくと思っています。
なぜかというと、対話型AIは結局のところ「入力に対して応答する」ものだからです。
どんな問いを立てるか、どういう条件を入れるか、何を前提として置くかで、出てくる答えがかなり変わります。ところが、人間は普段、かなり多くのことを省略して話します。自分の頭の中では分かっているつもりでも、実際には大事な条件を言葉にしていないことが多い。その状態でAIに聞くと、もっともらしいけれどズレた答えが返ってくることが普通にあります。「何を条件として明示すべきか」を考えるには、その対象をかなり理解していないといけないことです。つまり、対象をよく知っている人と、あまり知らない人とでは、AIへの問いかけ方そのものが大きく違ってきます。当然、返ってくる答えの質にも差が出ます。
要するに、今の対話型AIは、使い手のIQ、知識、経験、問題設定のうまさにかなり強く依存していると思うのです。
もちろん、単純な課題では差は出にくいです。たとえば「ある場所からある場所まで最適な経路を出す」といった話なら、誰が使っても大きな違いは出ないでしょう。
でも、研究の世界はそう単純ではありません。
研究では、課題設定の仕方がそもそも複雑です。前提条件も多いし、何を既知とみなし、何を未知として扱うのか、どこまで厳密に定義するのか、といったことをかなり丁寧に言葉にしないといけない。そこが曖昧だと、AIは簡単に見当違いの方向へ走ります。
だから、同じ「AIを使う」という行為でも、研究者によって活用の深さにはかなり差が出るはずです。むしろ、対象をよく知らない人が深く考えないままにAIを使うと、誤った答えを大量に受け取り、それを見抜けないまま誤解を深めてしまう危険すらある。一方で、対象をよく理解している人は、AIを精度高く使いこなせる。しかもAIは応答が速いので、そういう人の思考と生産性はさらに加速します。
そう考えると、少なくとも現時点の研究の世界では、AIは人間の能力差を無効化する方向に働いているというより、むしろその差を拡大する方向に作用しているように、私には見えます。
もちろんこの文章もAIです。
