詐欺メール

この文面は、かなり典型的な「権威利用型」の詐欺メールである。特に、日本の中小企業経営者や経理担当者の「税務署から来たなら無視できない」という心理を突いている。

まず最大の異常点は、連絡手段として外部チャットサービスである Chatwork のグループ参加を要求している点である。日本の税務署が、税務調査の正式連絡を民間チャットグループへの招待で行うことは通常考え難い。正式な税務調査であれば、税務署名・担当部署・固定電話番号・所在地が明記された文書や電話での連絡が基本になる。

次に、「税務署の井上健史と申します」としか書いていない。どこの税務署なのかが不明である。本物なら、
・○○税務署 法人課税部門
・担当官職名
・代表電話
などが通常は記載される。

さらに文章が不自然である。

「税務調査に係るご依頼及びご同行のお願い」
という件名からして違和感がある。「ご同行」は普通、税務調査で使わない。

また、
「最新の政策情報等をご説明し」
「不測のリスクが発生した場合」
など、曖昧で官僚文書を真似たような表現が多い。実際の税務署文書は、もっと具体的かつ事務的である。

特に危険なのは次の一文である。

「責任は貴社に帰するものとさせていただきます」

これは恐怖を与えて急がせる典型的手口である。冷静な確認をさせず、チャットグループに誘導しようとしている。

また、「返信不可なのでチャットワークで連絡しろ」というのも危険である。正規機関は通常、代表電話や窓口を案内する。

この種の詐欺の目的としては、以下が考えられる。

・会社情報の収集
・代表者情報の取得
・財務資料の窃取
・マルウェア送付
・電子マネーや送金要求
・口座情報取得
・後日の本格的なBEC詐欺(ビジネスメール詐欺)の準備

対応としては、

・リンクを開かない
・チャットグループに参加しない
・添付ファイルを開かない
・税務署の代表番号を自分で調べて確認する
・社内共有して注意喚起する

ことが必要である。

もし既にリンクを開いた場合は、端末のウイルススキャン、パスワード変更、社内IT担当への報告をした方がよい。

なお、日本の国税当局は 国税庁 や各税務署名義で正式手続を行うため、このような「匿名的なチャット誘導」は極めて不自然である。