会員が辞めないクラブづくり

「会員がやめないクラブづくり」という題名そのものに、現在のロータリークラブが直面している現実が凝縮されていた。かつては地域の名士や経営者が自然に集まり、一定の社会的信用や人的ネットワークを背景に会員が維持されていた時代もあった。しかし、今はそうではない。放っておけば人は減り、例会出席率も落ち、クラブそのものの存続すら危うくなる。その危機感が、このセミナー全体を通じて強く伝わってきた。
特に印象的だったのは、「どう新会員を増やすか」ではなく、「どうすれば退会しないか」という点に大きな比重が置かれていたことである。これは裏を返せば、入会者がいても定着しない、あるいは既存会員が静かに離れていく現実が相当深刻であることを意味している。会員維持のために、例会の雰囲気づくり、役割分担の見直し、若手や女性会員への配慮、懇親機会の増加、心理的安全性の確保など、企業の組織論や人事管理にも近い議論が行われていた。そこまでやらなければ人が残らない時代になったのか、という強い時代の変化を感じた。
また、「居心地の良いクラブ」という言葉も繰り返し出ていた。しかし、単なる仲良しサークルになればよいわけではない。ロータリーは本来、職業奉仕や社会奉仕を通じて人格を磨き、地域や社会に責任を果たしていく団体である。理念や緊張感を失えば、組織としての存在意義そのものが薄れてしまう。一方で、理念ばかりを掲げて人間関係への配慮を欠けば、人は疲弊して去っていく。この均衡をどう取るかが、各クラブに突きつけられている課題なのだと感じた。
さらに、少子高齢化、地域経済の縮小、経営者層の価値観変化も背景にあるだろう。昔のように「入って当然」という時代ではなくなった。時間の使い方に対する意識も変わり、毎週の例会参加を重荷と感じる人も増えている。その中で、ロータリーに所属する意味をどう再定義するのかが問われている。
今回のセミナーは、単なる会員増強の技術論ではなかった。むしろ、「ロータリーはこの先も社会に必要とされ続ける組織でいられるのか」という根源的な問いを突きつける場であったように思う。会員を辞めさせないために、ここまで知恵と労力を投入している現状に、私は大きな危機感を抱いた。同時に、この危機感から目を背けず、組織の未来を守ろうとしている人々の必死さも感じた。

