ゴキブリ亀田

今日は、2007年という時代を象徴する、ある「事件」について書きたいと思います。
当時18歳、飛ぶ鳥を落とす勢いだった亀田三兄弟の次男・亀田大毅。そして、その前に立ちはだかった15歳年上のWBC世界フライ級王者、内藤大助選手。
あの日、テレビの前にいた多くの日本人が期待していたのは、清々しい「真剣勝負」でした。しかし、私たちが目撃したのは、ボクシングという神聖なリングを汚す、あまりにも醜い「暴挙」の数々でした。
皆様も覚えていらっしゃるでしょう。試合前、大毅選手が放ったあの言葉を。
「負けたら切腹するわ。お前も負けたら絶対やれよ」
武士道精神を逆手に取ったような、薄っぺらで傲慢な挑発。さらに、内藤選手を「ゴキブリ」に例え、「ゴキブリ覚悟しとけ!」とまで言い放ちました。
18歳の若さゆえの過ち――そう呼ぶには、リングの上で起きたことはあまりに計画的で、陰湿でした。
ガードを固めて突進するだけのスタイルが通じないと分かると、彼は焦り、なりふり構わぬ反則行為を繰り返しました。
サミング、ローブロー、肘打ち、頭突き……。もはやボクシングではありません。それは、ルールという「品格」をかなぐり捨てた、ただの「暴力」でした。
しかし、私が本当に控訴したいのは、一人の少年ボクサーではありません。その背後にいた「大人たち」の姿です。
10ラウンド終了後のインターバル。マイクが拾った父・史郎氏と兄・興毅氏の言葉は、今思い出しても耳を疑うものです。
「キン○マ打ってもええから」「目ぇ入れろ」「重点的に突け」
これが、日本を代表する世界戦のセコンドが発する言葉でしょうか。
「勝てば何でもいい」という歪んだ教育。一人の若者を、勝利のための「道具」として、そして家族の「欲望」の象徴としてリングに立たせていたのではないか。
あの時、大毅選手は負けたのではなく、最初から「大人たちの傲慢」によって敗北させられていたのかもしれません。
結果は10ポイント差の大差判定負け。
場内には「切腹しろ!」という怒号が響き渡りました。
その後、大毅選手は1年間のライセンス停止、父・史郎氏は事実上の永久追放。
一家が築き上げた砂の城は、崩れ去りました。
皆様、どう思われますか?
私たちは、子供や孫に「結果がすべてだ」と教えてはいないでしょうか。
今の日本が失いつつある「相手を敬う心」や「潔さ」。
あの試合は、ただの八卦(ゴシップ)ではなく、日本の家庭教育や精神性が崩壊しかけていた、その警告だったように思えてなりません。
スポーツは、人生の縮図です。
ルールを守れない者に、勝利を語る資格はない。
そして、子供に「勝つためにズルをしろ」と教える大人に、教育を語る資格はないのです。
あの日の内藤大助選手の、腫れ上がった顔で微笑む姿を、私たちは今こそ思い出すべきではないでしょうか。

