中途採用
本来、採用面接とは企業と候補者が互いの価値観やビジョンをすり合わせる対等な対話の場である。とりわけ、代表取締役社長やCFOといった経営中枢を歴任した人材を迎える局面においては、企業が候補者を審査するのと同等に、候補者もまた「自らの知見とキャリアを投じるに値する企業か」を厳しく見極めている。
しかし、提示された面接対策の文面からは、企業側が一方的に「選ぶ側」に立ち、候補者にアピールを強いる旧態依然とした「上から目線」の態度が透けて見える。前任者の退職に伴う欠員補充であり、年内の早期採用を望んでいるという切迫した事情を抱えているのは企業側である。それにもかかわらず、自社の経営課題や前任者の退職背景、候補者に託したいミッションを具体的に開示して口説く姿勢はなく、「なぜ当社に関心を持ったのか」「どう貢献できるか」を一方的に語らせようとするのは、主客転倒と言わざるを得ない。
さらに看過できないのは、「質問の意図に沿って要点を絞れ」「まずは結論から話せ」といった、あたかも新卒学生に面接マナーを説くかのような指示である。組織のトップや統括職として数々の交渉や意思決定を重ねてきた実務家に対し、このような画一的で礼を失した注文をつけること自体、相手の経歴に対する敬意の欠如を物語っている。
面接で「カルチャーマッチ」を重視するというのであれば、まず企業自身が候補者に対して対等な敬意を示すべきだ。「採用してやっている」と言わんばかりの傲慢な姿勢は、それを無批判に伝達するエージェントの力量不足も相まって、その企業の偏狭な組織風土を自ら露呈しているに等しい。対等な信頼関係を築く気概のない企業に、有為な人材を惹きつける資格はない。
(当職個人の意見です)

