夫婦道

「夫婦道(ふうふどう)」は、倫理法人会の母体である倫理研究所の創始者・丸山敏雄が1945年9月3日に起稿した論文であり、のちに提唱される「純粋倫理」の原点となった思想です。

終戦直後、焼け野原となった日本の社会と道徳の荒廃を前にして、敏雄が「社会の混乱を収めるための根本は、社会の最小単位である夫婦のあり方にある」と見出して執筆されました。

その主な概要と核心となる考え方は以下の通りです。

夫婦一致が万善の根源

夫婦道において最も重視されるのは、夫と妻が心を一つに合わせること(夫婦一致)です。夫婦は単なる同居人や契約関係ではなく、陰と陽、プラスとマイナスのように、お互いが合わさることで一つの完全な生命体をなす存在であるとされます。

夫婦の仲が調和していれば、家庭内の雰囲気は自然と良くなり、そこで育つ子どもたちも健やかに成長します。さらに、その良好なエネルギーが周囲の人間関係や仕事(事業)へも波及していくため、「夫婦の一致こそが、すべての幸福と繁栄の根源である」と説いています。

夫の道と妻の道

論文の中では、夫婦それぞれが果たすべき精神的な役割(すじみち)が示されています。

  • 夫の道: 妻を愛し、慈しみ、その人格を尊重すること。家庭や社会において責任を持ち、妻が安心して生活できる心の拠り所となることが求められます。
  • 妻の道: 夫を敬い、その働きを支えること。夫の意思や立場を受け入れ、家庭内を明るく満たす役割を担います。

これらは男尊女卑のような主従関係ではなく、それぞれが異なる特性(男としての役割・女としての役割)を自覚し、互いを補完し合うための「機能的な調和」を意味しています。

倫理運動の出発点としての意義

この「夫婦道」の執筆を契機として、丸山敏雄は生活の中で実践すべき普遍的な法則をまとめ上げ、1949年の『万人幸福の栞』の完成へと繋げていきました。

のちに誕生する倫理法人会においても、この思想は深く受け継がれています。「企業を繁栄させたいのであれば、まずは経営者自身の家庭、とりわけ夫婦関係を良くしなさい」という教え(「家庭は経営の本である」という考え方)の根底には、この夫婦道の精神が生きています。