錫の食器の良いところ

錫(すず)の食器には、主に以下のような優れた特徴があります。

古くから「錫の器に入れた水は腐らない」「お酒の雑味が抜けて美味しくなる」と言われており、現代でも根強い人気があります。

  • お酒や飲み物が美味しくなる(イオン効果) 錫は粒子が粗く、水中の不純物を吸着する作用(イオン効果)があると言われています。これにより、お酒の雑味や苦味が抜け、まろやかな味わいになります。特に日本酒やビールとの相性が抜群です。
  • 抜群の保冷・保温性 金属の中でも熱伝導率が非常に高いため、冷たいものを注ぐと器全体がすぐにキンキンに冷えます。氷を入れたロックグラスや、冷酒用の器として使うと、冷たさを長くキープできます。また、温かいお酒(熱燗)も冷めにくい性質を持っています。
  • 錆びにくく、長く使える 空気中で酸化しにくいため、錆び(さび)たり変色したりすることがほとんどありません。銀食器のように黒ずむ心配がなく、特別なお手入れをしなくても独特の美しい光沢を長く保てます。
  • 有害物質が溶け出さない(高い安全性) 毒性がなく、金属アレルギーも起こしにくい非常に安全な金属です。そのため、古くから神仏具や高級な酒器として安心して使われてきました。
  • 割れない 陶器やガラスのように落としても割れないため、一生ものの道具として長く愛用できます。

一方で、錫は非常に柔らかい金属であるため、強い力を加えると変形しやすいという特徴もあります。また、融点(溶ける温度)が約232度と低いため、直火にかけたり、電子レンジに入れたりすることはできません。

結論から申し上げますと、福岡県の田川(筑豊地域)は錫(すず)の産地ではありません。田川は世界的に知られる「石炭(筑豊炭田)」の日本を代表する一大産地です。

日本国内において、錫の主要な産地(鉱山)として有名なのは以下の地域です。

  • 明延(あけのべ)鉱山(兵庫県)… 日本最大の錫の産地でした(1987年閉山)。
  • 錫山(すずやま)鉱山(鹿児島県)… 江戸時代から薩摩藩の財政を支えた歴史ある錫鉱山です。
  • 木浦(きうら)鉱山尾平(おびら)鉱山(大分県)… 九州で錫が採掘された代表的な鉱山です。

なぜ田川と錫が結びついたのか?

田川で錫が採れたわけではありませんが、歴史的なつながりとして、かつて筑豊で莫大な富を築いた「炭鉱王」の一人である藏内(くらうち)家(田川・大峰炭鉱などを経営)が、炭鉱の売却後に大分県の尾平鉱山を買収し、そこで錫や銅、鉛の鉱山経営を行っていたという歴史があります。

そのため、筑豊の炭鉱の歴史を調べていく中で、炭鉱主の足跡として「錫」という言葉に触れる機会があったのかもしれません。