中古車販売業ネクステージで社員自殺(労災事案)

 中古車販売大手「ネクステージ」で26歳の現役社員が昨年7月、仕事を苦に自殺していたことが「週刊文春」の取材で分かった。「ビッグモーター問題」後に次々と告発が
「ネクステージ」といえば、2023年時点でビッグモーターに次ぐ中古車販売業界第2位の企業だった。しかし昨年9月、同社でビッグモーター同様、不正が横行していることを「週刊文春電子版」が報じた。

「タイヤをパンクさせて見積もりを出していた」
「店長からボケ、カスと罵られた」
「店の前の草木にBMと同じく除草剤を撒いていた」
「ノルマがあまりにきつすぎて、不正をしないと追いつけない」当時、小誌の編集部には、元社員や現役社員からこうした告発が次々と寄せられた。

 その後、同社は社長が交代。不正の温床となっていた、社員が売った販売台数や保険数などに応じて与えられるインセンティブ制度も撤廃し、新たなスタートを切っている。

 だが——。その裏で、「仕事のノルマ」に追い詰められた若手社員が自ら命を絶っていた。

 2023年7月18日に亡くなったのは、井上魁洋(かいよう)さん(享年26)。群馬県内の大学を卒業後、ネクステージの前橋SUV専門店で勤務していた。「息子は会社に殺された」

 井上さんの母親が語る。

「私たちは『息子は会社に殺された』と思っています。今でも毎朝、起きるたびに息子のことを思い出します。あと1カ月、待ってくれていれば、状況は変わったかもしれないのに……」

井上さんはまだ26歳の若さだった
井上さんはまだ26歳の若さだった

 井上さんが遺していた日記にはこう記されていた。

〈仕事→やめたいと言ってもやめられない〉

〈もう休みたいけど、後に戻れない。にげみちない〉

井上さんが書き残していたノート
井上さんが書き残していたノート

「週刊文春」は、ネクステージ広報に対して、井上さんの自死について詳細な質問状を送付し、見解を問うたが、期日までに回答はなかった。

 母親は声を詰まらせてこう語る。

「私たち遺族は、会社に『自分たちが悪かった』と、非を認めてほしいと思っています」

 前途有望な若手社員を自死に追い込むほどのネクステージの労働環境とは、どのようなものだったのか――。現在配信中の「週刊文春電子版」では、母親の証言に加え、家族宛ての遺書、日記に綴られていた「仕事で追い込まれていく様子」や過酷なノルマの実態、井上さんの自殺を知った後の同社の対応などを詳しく報じている。