数種類の株式を発行できる米国市場についてグーグルを例に説明します
おはようございます。
2017年3月の株式市場に関する配信記事です。
いつも検索でGoogleのサービスにお世話になっている筆者です。
さて、このGoogle(以下日本語のグーグルと表記)、米国証券市場における巨大な時価総額を持つに至った世界的大企業ですが、この会社の株式を買おうとする場合、2種類あることに気づかれると思います。
筆者は、世界の会社の時価総額をランキングに並べる時などに、この2種類のグーグルの株の時価総額同士を掛け合わさないと実際の時価総額にならないことを知ったのは最近です。
詳しく説明しますと、2014年4月、グーグルはそれまでの株式1株あたり、無償で1株を割り当てたのです。
これだけの説明ですと、普通の1対1の株式分割に過ぎず、投資家は倍の株式を保有して価格が半分になる、そして単位あたりの株価が下がるので個人投資家などに買いやすくなる、といった効果が得られるということは変わりません。
しかし、ここでグーグルの創業者兼大株主兼経営者である、ラリーペイジとセルゲイブリン、その仲間たちは金融当局や大手証券会社や証券市場と協議し、特別な株を割り当てることにしたのです。
グーグル(ティッカーシンボル:日本では4桁の証券番号にあたるもの:GOOGL)が無議決権株を無償で1対1の割合で既存株主に割り当てたのです。
これで、グーグルの株価が半分になったのですが、この無議決権株は厳密には「別のティッカーシンボルである」GOOG株と言われることになります。
クラスC株式ともいいまして、この「株」は株のくせに議決権がない無議決権株なのです。
配当はもらえますし、価格も付いています。
しかし、会社の方向を決める議決権はない、このような特別な経済的価値のみを抽出した株式を別に発行したのです。
これまでの既存の株式はクラスA株式と言われ、1株あたり1つの議決権を持ちます。
そして、クラスC株式は、1株あたり0つの議決権、すなわち議決権はありません。
門外不出のクラスB株式というのもある
また別に、市場に流通していない(させない)クラスB株式というものもあります。
これはなんと1株あたり10個の議決権があるのです。
そして、この門外不出のクラスB株式は、創業者兼経営者である彼らがずっと持っており、議決権ベースでいいますと、過半数の議決権は彼らに留保されているということになるのです。
もともと議決権のあったクラスA株式には新しいティッカーシンボルであるGOOGLを付与され、今回新しく作られた無議決権株であるクラスC株式が以前のティッカーシンボルのGOOGを継承しました。
これは今後同社が社員のボーナスとしてストックオプションなどを支給する際、無議決権株を渡すことで創業者の持ち株比率をこれ以上薄めることを避けることができるようになった、ということなのです。
さて、こうすると、なんとなくGOOGL(クラスA株式)の方が特なんじゃないか、という向きもあると思いますが、ここは、頭のよいグーグルのこと、議決権のないGOOG(クラスC株式)が議決権のあるGOOGL株の価格に追随しない場合、GOOG株の保有者に対してグーグルという会社自体がが補償しますと約束しているのだ。
このような取り決めがあるために、2種類の株価はほとんど同じ価格で動き続けることになります。
このような例は日本では現時点ではありませんが、さすが証券市場大国のアメリカ、頭の良い人たちがいろいろなことを考えるものだと妙に感心いたしました。
これも、イノベーションの一例なのかもしれません。
グーグル株を買う前に、まずは米ドルに変えないといけない国内派の筆者からは以上です。
(平成29年3月26日 日曜日)