気づき

森保監督は予選敗退で批判される韓国代表監督について聞かれてどう答えたのか?
~森保監督から学ぶ、日本代表が次のステージに行くために重要なこと~
2026年7月2日。ブラジルに敗れ、目標を達成できないまま帰国した森保一監督の会見。
韓国の放送局「チャンネルA」の記者が手を挙げた。
「韓国は過去最悪の成績と言われています。韓国の現状をどう評価されていますか。アドバイスはありますか」
自分たちも悔しい帰国をした日に、別の国の話を聞かれた。
普通なら、言葉に詰まるか、やんわり断るか、短く切り上げるか。
森保監督は3分近く、丁寧に答えた。
この3分間の答えの中に、日本代表が次のステージに行くヒントが隠れているような気がした。
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🔑 森保監督は何と言ったのか
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まず、こう前置きした。
「韓国の状況をすべて知っているかといえば、ほとんど知らないので、軽々しくコメントできることは少ない」
謙虚に始めた上で、こう続けた。
「洪明甫監督とはプライベートで会って話したり、E-1で対戦したり、ライバルとしても友人としてもお付き合いしている。過去最悪ということはない。国のために身を粉にして頑張っている」
「グループリーグは突破できなかったかもしれないが、世界の舞台で1勝はしている。3試合目は難しい舵取りの中で思った結果が出なかったかもしれないが、結果を出すための努力は最大限している」
そして、笑顔でこう締めた。
「褒める報道をしてあげてください」
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🔑 これは「問題から目を逸らした」のか
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ぼくが最初に感じた疑問はそこだった。
批判されている監督を庇う。悪いところに目を向けず、いいところだけを言う。それは現実逃避ではないのか。
でも会見の全文を読むと、そうではないことがわかった。
森保監督はちゃんと問題を認識している。
「グループリーグ突破できなかった」「思った結果が出なかった」「われわれも目標を達成できていない」
問題をきちんと見た上で、それでも「1勝はしている」「最大限の努力をした」「国のために身を粉にして頑張った」と、人間の貢献と努力を先に語った。
問題から目を逸らしたのではない。問題を認識した上で、意図的に強みと努力に目を向けた。
これは楽観主義でも、現実逃避でもない。意図的な選択だ。
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🔑 なぜその選択が次のステージに行くために重要なのか
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ここからは、ぼくの解釈だ。
人間には本能がある。
批判された時、追い詰められた時、うまくいかない時——ぼくたちは反射的に「敵」を作る。批判する。防衛する。攻撃する。それは何百万年もかけて磨かれた、生存のための本能だ。
でもその本能は、現代の「結果を出す」という場面では、しばしば逆効果になる。より重要なことに使うべきエネルギーを、敵への対応で消耗してしまうからだ。
また、心理学者マーティン・セリグマンの「強みベースのアプローチ」はこう示している。人間は「何が問題か」「何が欠けているか」に注目して修正しようとするより、「何がうまくいっているか」「何が強みか」に注目してそれを伸ばす方が、成長が速く、モチベーションが持続する。
さらに心理学者デシとライアンの「自己決定理論」によると、人間は「有能感」を感じる時に内発的モチベーションが最も高まる。批判は一時的に行動を変えるかもしれないが、称賛と承認は人間の内側から動こうとする力を引き出す。
これを世界で最も実証した企業がある。
Googleだ。
2012年、Googleは「プロジェクト・アリストテレス」と呼ばれる大規模な社内調査を行った。数百のチームを分析して「生産性の高いチームの条件は何か」を徹底的に調べた。
当初、研究者たちは「優秀な個人の集まりが成功の鍵」と考えていた。しかし結果は予想外だった。学歴・スキル・個人能力とチームの成果にはほとんど相関がなかった。
最大の要因は「心理的安全性」だった。
つまり「自分の意見を否定されることなく自由に発言できる環境」があるチームほど、生産性が高く、離職率が低く、マネージャーから「効果的に働いている」と評価される機会が2倍多かった。
「褒める」ことは甘やかすことではない。人が内側から動く力を引き出し、主体的に判断して動ける環境を作る、最も合理的な選択だ。
ブラジル戦の後、選手たちはこう言った。
冨安健洋「守備時でも主体的にやることができないと、彼らとは対等に渡り合うことはできない」
谷口彰悟「自分を中心にやらないといけなかった。個人個人、もっともっと突き詰めて上を目指していかないと」
伊東純也「個々の力はまだまだ足りない」
三者三様の言葉だが、本質は同じだ。主体的に判断して動く力、その精度を上げること。それが次のステージへの鍵だと、選手たち自身が言っている。
森保監督が「褒める報道をしてあげてください」と言ったのは、韓国への同情でも、その場しのぎの外交辞令でもない。
批判より称賛の方が、人を内側から動かし、主体的に判断して動ける力を引き出すことを、8年間日本代表の監督として体で知っていたからではないかとぼくは思う。
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🔑 同じ日、空港でも
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帰国の空港でも、同じ姿勢を見た。
森保監督は自らカメラを手に取り、ファンと記念撮影をした。
そして見送りに来た小さなサッカー少年に、こう言った。
「日本代表になってね」
ブラジルに負けた悔しさを抱えたまま、帰国した日の出来事だ。
この言葉を受け取った子どもは、どう感じるだろうか。
「代表監督が自分に言ってくれた。自分にも可能性があるんだ」
そう思った瞬間から、その子は自分で考え始める。どうすれば代表に入れるか。何を練習すればいいか。どこで戦えばいいか。
誰かに言われたからではなく、自分の中から動きたくなる。
これが「主体性を引き出す」ということの本質だ。
森保監督は、韓国の監督に向けても、空港の少年に向けても、日々の選手との関わりの中でも、一貫して同じことをしていた。
問題はきちんと認識する。その上で、人が主体的に動けるような言葉を選ぶ。それが人を内側から動かし、自分で考えて動く力を生む。何年、何十年先まで考えて。
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🔧 ちょっとだけ、ぼくの話を
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ぼくたちは、批判や叱咤激励を受けて「悪いところを直す」という教育を受けてきた。それは確かに、問題に目を向けて改善するという観点では機能する。素晴らしいことでもある。それが当たり前の環境で育ったのでそれを当たり前のようにやってしまう。
ただ、局面を打開するには、単なる問題解決だけでなく、自分がどう判断して動くかという主体性がより重要になる場面がある。
だからこそ、ぼくたちが今まで受けてきた「問題点に目を向ける」という教育に加えて、しっかりと問題を認識した上で、いいところを見つけて褒める、称賛する、伸ばす。そこをもっと口に出してやっていく必要があるのではないか。
そうすることで、日々の仕事でも、子育てでも、さらには日本全体がより良くなることにおいても、重要なことだとぼくは思う。
ぼくも、目の前の人の「いいところ」に、もっと目を向けていきたい。そう、あらためて思わせてもらった。
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