これは厳しい

離婚してから、自分が思ってたより性格悪いことに気づいた。

結婚してたときは基本的に元夫が悪いと思ってた。今でも元夫が悪かったことのほうが多いとは思ってる。元夫はとにかく話し合いができない人だった。何か言うとすぐ黙るし、「今は話したくない」と言って逃げる。私は別に怒鳴ったり物に当たったりするわけでもなくて、普通に理由を聞いてるだけなのに、それすら嫌だったらしい。

例えば元夫が約束を忘れたとする。私は「なんで忘れたの?」と聞く。元夫は「ごめん」と言う。「謝ってじゃなくて、なんで忘れたのか聞いてる」「忘れてたから」「それは分かってる。なんで忘れたの?」「分からない」「自分がやったことなのに?」「本当に分からない」「じゃあまたやるってこと?」みたいな話を何時間もしてた。元夫が「もういいじゃん、次から気をつけるから」と言っても、「何を気をつけるの?」と聞いた。「忘れないようにする」と言われたら「どうやって?」と聞いた。具体的に答えられないなら意味がないと思ってた。

途中で「もうこの話やめたい」と言われても終わらせなかった。「なんで?」「疲れた」「私も疲れてるよ」「明日にして」「明日にしたらちゃんと話すの?」「話す」「何時?」「分からない」「じゃあまた逃げるじゃん」。別の部屋に行かれたら追いかけたこともある。ドアを閉められたら外から話したこともある。「一人にして」と言われると、「私だってこんな話したくないけど、あなたがちゃんと話さないから終わらないんだよ」と言ってた。一回「お願いだから今日はもう寝かせて」と言われたときは、「私はこの状態で寝られないけど、あなたは寝られるんだね」と言った。元夫は戻ってきた。当時は、だったら最初から逃げないで話せばいいのにと思ってた。

泣かれたことも何回かある。私は泣いてる間は待ってた。でも泣き止んだら「落ち着いた? じゃあさっきの話だけど」と続けてた。元夫には「何を言っても終わらない」と言われたことがある。私は「そんなことない。納得できる説明をしてくれたら終わる」と答えた。「何なら納得するの?」「それを私に聞くのおかしくない? 自分のことなんだから自分で考えて」。これも当時は普通のことを言ってると思ってた。

私は怒鳴らなかった。むしろ元夫が怒鳴ると「大きい声出さないで」「今感情的になってるよ」と言ってた。だから自分のほうが冷静だと思ってた。元夫から一度、「お前は絶対自分が正しいと思ってる」と言われた。私は「絶対正しいとは思ってない。私が間違ってるなら説明して」と答えた。そうしたら「そういうところだよ」と言われた。

結局いろいろあって離婚した。離婚するときも元夫は、もう話したくないと言ってた。私は夫婦だったんだから最後くらいちゃんと話したほうがいいと言ったけど、向こうは必要なことだけ決めて終わりにした。正直かなり無責任だと思った。結婚生活を終わらせるのに、話し合うことすらできないんだと思った。

離婚してしばらくしてから、好きな人ができた。付き合ってはいなかったけど、何度も二人で会ってたし、連絡もかなりしてた。向こうから誘ってくることもあったので、少なくとも最初は向こうにも好意があったと思う。私はそのうち付き合うんだと思ってた。

離婚したあと初めてちゃんと好きになった人だったので、今度は同じ失敗をしないようにしようと思ってた。元夫との結婚では相手が何も言わないことが多くて、それでかなり苦労したので、今度は最初から思ってることをちゃんと言い合える関係にしたかった。私は言いたいことがあるなら言ったほうがいいと思ってる。言わないで勝手に不満を溜めて、ある日突然もう無理ですと言うのは卑怯だと思う。相手に直す機会も与えてないし、自分だけ心の中で結論を出してるから。

その人は最初の頃は連絡が多かった。朝に向こうから来ることもあったし、夜も結構長くやり取りしてた。それが少しずつ減っていった。私はそういう変化には割とすぐ気づく。前は昼休みに来てたのに来なくなったとか、前なら話を広げてくれたのに「そうなんだ」で終わるとか、次に会う話を向こうからしなくなったとか。

最初は仕事が忙しいのかなと思ってた。でも忙しいなら忙しいと言えばいいと思う。私は別に毎日同じ量の連絡をしろと言ってるわけじゃない。今日は忙しいとか、ちょっと疲れてるとか、それだけ言ってくれればこっちだって分かる。

だから「最近ちょっと連絡減ったけど何かあった?」と聞いた。

「別に何もないよ」と言われた。

何もないならなんで減ったんだろうと思ったので、「前より減ってるよね」と返した。

向こうは「そうかな」と言った。

私は実際減ってると思ったので、前はもっと連絡してたよね、と言った。「忙しいだけ」と返ってきたので、「前に忙しいって言ってたときは普通に連絡くれてたけど、今回は何か違うの?」と聞いた。

「毎日同じじゃないから」と言われた。

「それは分かるけど、じゃあ今回は何が違うの?」

そこでしばらく返事が来なくなった。

私は、聞かれたくないことを聞かれたから返事が来ないんだと思った。

別に返信を強制したかったわけではない。態度が変わったなら理由があると思っただけだった。むしろこういう小さい違和感を放置して、後になって実はあのときから嫌でしたと言われるほうが嫌だった。元夫との結婚でそれは十分経験したので、今回はちゃんとその都度確認しようと思ってた。

一度、向こうから「いちいち確認されるのしんどい」と言われた。

私は「確認されるようなことをしなければいいんじゃない?」と言った。

向こうは「そういう言い方が嫌」と言った。

「じゃあどう言えばいいの?」と聞いた。

「別に何も言わなくていい」

それはおかしいと思った。何か気になっても何も言わずに我慢するのが正解なら、結局何も話せない。

「何も言わないで私が勝手に我慢してればいいってこと?」

「そういう極端な話してない」

「じゃあどこまでなら聞いていいの?」

「そういうのを決めたいわけじゃない」

「でも聞くなって言うなら、何なら聞いていいのか分からないよね」

向こうは「もういい」と言った。

私は、またちゃんと説明しないで終わらせるんだと思った。

その日は向こうがもう寝ると言ったので、それ以上は聞かなかった。元夫とのことがあったから、そこで止めた自分は前より相手に合わせられるようになったと思った。

でも次の日に、「昨日の話だけど」と送った。

向こうから「まだやるの?」と返ってきた。

その言い方には少し腹が立った。私は喧嘩を続けたいわけじゃなくて、途中になった話を終わらせたかっただけだから。

それも説明した。

そのあと向こうから謝られたので、一応その話は終わった。私はちゃんと話せば分かる人なんだと思って安心した。

でも今考えると、向こうは納得したんじゃなくて、終わらせたかっただけなのかもしれない。

少し経って、もう二人では会いたくないと言われた。

かなり急だった。

私は「なんで?」と聞いた。

「一緒にいると疲れる」

「何が疲れるの?」

「いろいろ」

「いろいろじゃ分からない」

「こういうところ」

「こういうところって何?」

「全部説明しないと納得しないところ」

「説明できるなら説明すればよくない?」

向こうがため息をついた。

私はその態度にも腹が立った。こっちは突然関係を切られようとしてる側なのに、切る側が説明することを面倒くさがるのは普通に不誠実だと思った。

それまでのことを一つずつ聞いた。「いつからそう思ってたの?」「前から」「前っていつ?」「分からない」「先週会ったときは?」「そのときも少し思ってた」「でも次また行こうって言ったよね」「言った」「じゃあなんで言ったの?」「そのときはそう思ったから」「疲れると思ってたのに?」

向こうは「人の気持ちはそんなにきれいに説明できない」と言った。

私は、それは説明できない人の言い訳だと思った。気持ちが変わること自体は仕方ない。でも変わったなら、いつ、何があって、どう変わったのかくらい自分で考えれば分かると思う。

それに、私は向こうから誘われて会った日も何回もあった。嫌だったならなんで誘ったのか、疲れると思ってたならなんで何時間も一緒にいたのか、帰ったあとにまた行こうと言ったのは何だったのか、そういうことも聞いた。

向こうは「そのときは楽しかったときもある」と言った。

「じゃあ何が変わったの?」

「積み重なった」

「何が?」

「だからこういうのが」

「こういうのって質問すること?」

「そう」

「でも質問するようになったのは、あなたの態度が変わったからだよね?」

向こうは黙った。

私はそこは大事だと思った。最初から私が何でも質問してたわけではない。向こうの態度が変わって、それが分からないから聞くようになった。原因と結果が逆になってると思った。

それを説明したら、「そうやって全部こっちのせいになるのが嫌」と言われた。

私は全部向こうのせいなんて言ってないと言った。

「私にも悪いところはあると思うよ。でも、私がこうなった理由もあるよねって言ってるだけ」

「それがもう無理」

「何が?」

「何言っても言い返される」

「言い返してるんじゃなくて、違うと思うところを言ってるだけだけど」

「それ」

「だからそれって何?」

また同じことになった。

「終わらせる側はもう決めてるからいいかもしれないけど、言われる側は急なんだから、ちゃんと説明する責任くらいあるんじゃない?」と言った。

向こうは「そうやって自分の考えを正解みたいに言うのが嫌だった」と言った。

私は「正解とかじゃなくて普通の話をしてるんだけど」と答えた。

「その普通を押し付けられるのがしんどい」

「じゃあ、何も説明せずに人との関係を切るのがあなたの普通なの?」

「そういう言い方するところ」

「どういう言い方?」

向こうはもう帰ると言った。

私は「この状態で帰るの?」と聞いた。「帰る」「じゃあこの話はもうしないってこと?」「したくない」「私はまだ聞きたいことあるけど」「もう無理」「何が無理なの?」「今それ聞く?」

私は聞いた。分からないから聞いてるのに、聞くこと自体を悪いことにされたら何も話せないと思った。

向こうは帰った。

帰ったあと、かなり長いメッセージを送った。

責めたいわけではないこと、もう会いたくないという結論を変えろと言ってるわけではないこと、私も自分の悪いところがあるなら直したいと思ってること、そのためには具体的に何が嫌だったのか教えてほしいことを書いた。

あと、今日の話では私が一方的に悪いみたいになってたけど、向こうも途中で態度を変えたこと、それについて何も説明しなかったこと、私が聞いたら面倒くさそうにしたことについてはどう思ってるのかも書いた。

自分でも長いと思ったけど、中途半端に書いて誤解されるより全部書いたほうがいいと思った。

返事はなかった。

次の日の昼にも来なかった。

私は前のメッセージが長すぎて、何に答えればいいか分からないのかもしれないと思った。

だから夜にもう一度送った。

今度は質問を分けた。

いつ頃から一緒にいると疲れると思っていたのか。

私のどういう言動が一番嫌だったのか。

嫌だと思ったときに言わなかったのはなぜなのか。

それまで向こうから誘ってきたのはどういう気持ちだったのか。

私が聞くようになった原因が向こうの態度の変化だったことについてはどう思うのか。

私が改善しても、今後二人で会う可能性は一切ないのか。

最後の質問は送るか少し迷った。

別に縋ってると思われたくなかったから。

私は付き合ってくれと言ってるわけじゃない。ただ、直せるところを直しても絶対に無理なのか、それとも今は疲れてるから距離を置きたいだけなのかで全然違うと思った。

だから確認した。

返事は次の日に来た。

「もうこういうやり取り自体がしんどい。これ以上説明したくない。会うつもりもない」

私はかなり傷ついた。

でも同時に、その返事にも納得できないところがあった。

説明できない、ではなくて説明したくないと言ってる。だったら理由はあるということになる。それを説明せずに「しんどい」で終わらせるのは、自分だけ楽なほうに逃げてるように思えた。

私はそれをそのまま送った。

「説明できないなら仕方ないと思う。でも説明したくないっていうのは、私には少し不誠実に感じる。終わらせるならなおさら、最低限相手が納得できるようにするのも必要じゃない?」

返事はなかった。

数時間待った。

既読にはなってた。

私は、読んでるのに返さないということは、少なくとも私の言ってることについて考えてはいるんだと思った。

夜になっても来なかったので、「責めてるように見えたならごめん。でも本当にこれで最後にしたいから、さっきのことだけ答えてほしい」と送った。

返事はなかった。

次の日もなかった。

私は何度もメッセージの画面を見た。自分が送った文章も読み返した。そんなにおかしいことを書いてるようには思えなかった。多少長いとは思ったけど、感情的に罵ったわけでもないし、会ってくれと頼んでるわけでもない。むしろかなり整理して書いたと思った。

二日くらい経ってから、一回だけ電話した。

出なかった。

少しして「電話はやめて」と来た。

私は「分かった。もう電話しない」と返した。

そこで終わらせようと思った。

でもしばらくして、元夫に言われたことを思い出した。

お前は絶対自分が正しいと思ってる。

好きだった人にも、自分の考えを正解みたいに言うのが嫌だと言われた。

それで急に気になった。

だから「これだけ教えてほしい」と送った。

「私が元夫にしてたことと同じようなことをあなたにもしてた?」

返事はなかった。

私はこの質問だけは答えてほしいと思った。

だってもし同じなら、私にも問題があったということになる。それなら私はちゃんと認めるつもりだった。

次の日に、「何度もごめん。これだけ答えてくれたらもう連絡しない」と送った。

その日の夜まで返事はなかった。

翌日もなかった。

私は、もう連絡しないと言った手前、これ以上送るのはよくないと思った。

だから送らなかった。

でも頭の中ではずっと考えてた。

向こうが最初に誘ってきた日のこととか、向こうから次の予定を決めたこととか、楽しかったと言ってたこととか、そういうのを思い出してた。

本当にずっと疲れてたなら、あれは何だったんだろうと思った。

途中から嫌になったなら、どこからだったんだろうと思った。

私が聞きすぎたから嫌になったと言うけど、私が聞くようになったのは向こうの態度が変わったからだった。だったら最初に態度を変えたのは向こうなんだから、全部私が原因というのもおかしいと思った。

そういうことを考えてると、やっぱり一度ちゃんと話せば分かるんじゃないかという気持ちになった。

文章だと細かいニュアンスが伝わらないから、会って話したほうが早かったんじゃないかとも思った。

でも電話はやめてと言われてたので、電話はしなかった。

その点はちゃんと守った。

数日後、「もう連絡しないでください」と来た。

敬語だった。

それまで私に敬語を使ったことはほとんどなかったので、かなりショックだった。

私は「分かりました」とだけ返した。

それ以降は連絡してない。

しばらくしてから、元夫に言われたことをまた思い出した。「お前は絶対自分が正しいと思ってる」。好きだった人にも、ほとんど同じことを言われた。全然違う二人に同じようなことを言われたので、さすがに私にも何かあるんだと思う。

特に、もう話したくないと言われてるのに何度も聞いたのはよくなかったと思う。今ならそこは分かる。相手が答えたくないと言ったら、そこで終わらせないといけないらしい。

ただ、今でもよく分からない。

私は自分と違う考えの人が嫌いなわけじゃない。違うなら違うで、なぜそう思うのか説明してくれればいいと思ってる。筋が通ってれば私だって納得する。

でも二人とも途中で黙った。話したくない、疲れた、もういい。そういうことばかりだった。

私が相手を追い詰めてたということなんだと思う。でも、こっちが何も聞かなかったら、相手の言うことを全部そのまま受け入れるしかなくなる。それは話し合いとは違うと思う。

たぶん私は、自分が思ってたより性格が悪い。

でも好きだった人については、今でも向こうにも悪いところはあったと思ってる。最初から態度を変えずにちゃんと話してくれてたら、私だってあそこまで聞かなかった。

そこまで私だけが悪かったとは、今でも思えない。