楽しい海外視察
公費を使った海外視察という名目でありながら、実態はただの浮かれた慰安旅行だったと言わざるを得ない。バンコクの高級ホテルで催された公式日程の送別宴において、自民党と民主県政県議団の議員が壇上に上がり、映画のワンシーンを真似て「タイタニック」ごっこに興じている姿には、思わず開いた口が塞がらない。県民が物価高や重い税負担に苦しむなか、主権者の負託を受けた地方議員が異国の地で羽目を外し、歓楽に耽っている構図はあまりにも無責任で軽率極まりない。
普段の議場では理念や政策の違いを掲げて対立しているはずの与野党議員が、海を渡った途端に肩を寄せ合ってはしゃぐ姿を見せつけられれば、日頃の論戦すら単なる「政治ごっこ」の茶番劇だったのではないかと疑いたくもなる。超党派の交流や友好親善それ自体を全否定するつもりはないが、公務の場としての最低限の品位や緊張感すら持ち合わせていない姿には、有権者として深い失望を禁じ得ない。
それ以上に呆れ果てるのは、こうした実態を覆い隠そうとする県議会の不誠実きわまりない情報公開姿勢である。公式報告書には議長の儀礼的な挨拶と写真だけを体裁よく掲載し、都合の悪い酒宴の実態には一切触れていない。それどころか、現地の車両やガイド代などの委託費が当初契約の61万3千円から202万9千円へと3.3倍にも跳ね上がっているにもかかわらず、その理由や内訳についての説明は完全に放棄されている。さらに、同行した議員連盟の15名に至っては氏名すら公表されず、誰がどの財布で行ったのかも不明瞭なままだ。
都合の良い美辞麗句だけを並べ、不都合な金と人の実態を隠蔽する報告書は、県民への背信行為そのものである。氷山に激突して沈みゆくのは、浮かれてタイタニックのポーズを取る議員たち自身ではなく、彼らの道楽に費やされた県民の血税と議会への信頼である。地方議会の海外視察がなぜ世間から「物見遊山」と指弾され続けるのか、その根本的な理由をこれ以上ないほど見事に露呈させた、救いようのない醜態である。
