部下が辞めない上司

①仕事で何を期待されているかを、明確に伝えている 何をどこまでやれば十分なのかが、部下の側で言葉になっているか。担当の範囲、自分で判断してよい線、上司に上げるべき線。ここが曖昧なままだと、部下は毎回上司の顔色をうかがって判断することになります。「頑張ってほしい」は期待を伝えたことになりません。

②成果を上げる方法について、継続的に指導・助言している この項目が見ているのは頻度です。半期に一度の評価面談でまとめて渡すのか、日々の仕事の中で渡しているのか。指摘が半年後になれば、部下はそれまで同じやり方を続けます。本人は正しいと思って続けているので、あとから指摘されるほど痛みが大きくなります。

③専門性やキャリアの成長を、積極的に支援している 目の前の担当業務よりも、その人の数年後に関心が向いているか。いまの戦力として計算するだけなら、この点数は上がりません。3年後にどうなりたいのかを一度も聞いていなければ、部下の採点には表れないということです。

④適切な場面で、意思決定にあたって相談している 決めるのは上司でかまいません。決める前に聞いているかどうかです。決まったことを伝えるだけの上司と、決める前に「どう思う」と聞く上司。結論が同じでも、部下にとっては自分が関わった決定と、降りてきた決定に分かれます。

⑤状況が厳しいときでも、チームに前向きな姿勢を生んでいる 順調なときは差が出ません。トラブルが起きたとき、数字が届かないとき、無理な納期が降りてきたとき。そこで誰かのせいにするのか、次の手を出すのか。部下が見ているのは、うまくいっていないときの振る舞いです。

⑥信頼できる人である 約束したことが実行されるか。相談した話が他に流れないか。評価の基準が人によって変わらないか。残る5つが成り立つ前提になる項目です。

このうちどれが一番効くのかは、この研究は答えていません。6つの平均点を1つの指標として使っており、統計的にも、6つをまとめた指標が上司ごとのばらつきの約70%を説明していました。1つだけ突出していても意味は薄い、ということになります。

ただ、項目ごとの平均点には差がありました。もっとも高いのは、決める前に相談しているという項目の84.1点。もっとも低いのが継続的な指導・助言の74.6点で、次がキャリアの成長支援の77.0点でした。部下の意見を聞くところまでは届いていて、育てるところで止まっています。