エバーノートが使いにくい
Evernoteに対する不満の本質は、単なる好みの問題ではなく、「メモ・知識管理ツールとしての基本性能(動作・同期・コスト・信頼性)」が構造的に破綻したことに起因します。論理的な要因は以下の4点に集約されます。
1. 技術的負債とパフォーマンスの劣化(Electron移行と同期不良)
- ネイティブコードの放棄による重量化: かつてOSごとに最適化(C++やSwift/Cocoa)されていた高速なネイティブアプリを捨て、Web技術ベースのクロスプラットフォームフレームワーク(Electron)に統一した結果、メモリ消費が激増し、起動・描画・検索の速度が致命的に低下しました。
- 同期処理の不安定化: バックエンドの刷新やリアルタイム同期の導入以降、ノートの重複(コンフリクトコピー)の多発、同期遅延、最悪の場合は編集内容の先祖返りやデータ消失といった、ノートツールとして最も許されない不具合が常態化しました。
2. UI/UXの改悪と「即時性」の喪失
- 思考の中断(レイテンシの増大): メモツールの生命線は「思いついた瞬間に記録できる即時性」ですが、起動ラグ、重いUI描画、画面遷移の引っかかりが思考のテンポを阻害します。
- 不要な機能の肥大化(Bloatware化): ホーム画面のウィジェット、カレンダー連携、タスク管理、AI機能など、純粋なノート作成以外の付加機能が次々と追加され、ツール自体が過度に複雑化・鈍重化しました。
- 過剰なアップセル導線: アプリ起動時や機能利用時に有料プランへの誘導ポップアップが頻繁に割り込み、作業への集中を削ぎます。
3. 料金設定と価値のアンバランス(費用対効果の崩壊)
- 度重なる大幅値上げ: かつて年額数千円程度だったプランが、買収(Bending Spoons社)を経て年額1万円を大きく超える価格帯へと高騰しました。機能改善が伴わない中での値上げにより、コストパフォーマンスが著しく悪化しています。
- 無料プランの事実上の廃止: ノート上限50件・ノートブック1冊という極端な制限により、かつての強みだった「とりあえず入れておく」というフリーミアムモデルが形骸化し、新規参入も既存ライト層の維持も不可能な設計になりました。
4. 開発思想の変質と「信頼性」の喪失
- 第二の脳としての永続性への不安: ノートアプリの本質は「10年、20年と安全にデータを預けられるか」という信頼性です。買収に伴う開発拠点の移転や人員削減、突然のプラン改定を繰り返す姿勢は、「いつ仕様変更やサービス終了が起きてもおかしくない」というリスクをユーザーに強く印象付けました。
かつて「すべてを記憶する」を掲げて最前線を走っていたサービスが、技術の妥協と短期的な収益化を優先した結果、肝心の「素早く安全にメモを取る」という根幹のユーザー体験を自ら破壊してしまった点が、多くのユーザーが強いストレスを抱く最大の要因です。

