打たれた監督

【打たれた監督】前人未到50ー50達成がかかった7回の大谷翔平の打席で敵チームのシューマッカー監督は
「かまうもんか!俺は彼をとてつもなく尊敬しているんだ。歩かせる(勝負しない)なんてバカなことできるか」と言い放ち、勝負に打って出たとのこと。
結果、ホームランを打たれ、ついでに次の打席でも、またホームランを打たれてしまいました。
しかし、相手チームの選手もファンも、悔しさより真っ向勝負で歴史に残ることになったことを喜んでいるようです。
シューマッカー監督は今日は自らのチームにとっては大きなダメージだったが、メジャーリーグの野球界全体にとって、歴史に刻む大きな価値を与えた試合だったと言った。
胸に染み入る言葉ではないでしょうか。だからこそ、勝負は尊い。負けようが勝とうが、勝負を挑む姿勢を、その意気を、讃えたいものです。勝負の刹那を味わうことなく、結果だけを云々するのは、大変失礼なことだと思います。

マーリンズのシューメーカー監督!
素晴らしい采配!!
きっとマーリンズは大きく成長することでしょう。

現地2024年9月19日、大谷翔平選手は絶好調の4打席4安打、2塁打x2、本塁打x1。すでに打点5を積み上げていました。

この時、大谷選手はその日すでに二つの盗塁を行っていて、51盗塁。前打席の本塁打で49本塁打、50-50までホームラン後1本まで迫っていました。

しかし、この大事な場面で大谷選手はバッターボックスに入りながら相手投手では無く、チラチラと相手チームのマーリンズのベンチを見ていました。

理由は明白でした。2-アウト、2・3塁の状況で1塁が空いている。4の4、長打3の大谷に勝負せず、普通なら敬遠する場面。ここは大谷選手が50本を狙いたい所だけど、バットを振らせてもらえないのでは、と観ている人の多くは考えたと思います。

マーリンズ監督はスキップ・シューメーカー監督。10年間、バッティングの才能があまり無いと言われていたに関わらず、外野手としての守備力やハッスル・プレイが評価され、メジャーで10年間生き残った「努力の人」から8年間コーチを務めてきて、ようやく去年(2023年)に弱小マーリンズの監督に抜擢されたら予想外にいきなりプレイオフに進出した若手監督です。

今年はマーリンズはあまり成績は振るいませんが、若手監督としてかなり評価を得ている人です。

この大谷選手の「50・50」の偉業を達成できるか否かの場面でシューメーカー監督が敬遠を指示するか大谷選手が見ていて、またアメリカのテレビカメラも彼に向けられていました。

ピッチングコーチが「敬遠しますか?」と聞いたようですが、シューメーカー監督はしかめっ面で

「Fuck that! I've got too much respect for this guy for that shit to happen.」

「(敬遠なんて)クソくらえ。俺はコイツ(大谷)の事をリスペクトしているんだ、そんなクソみたいな真似をできるか」

と言って勝負を命じました。

大谷選手は0-2と追い込まれましたが、1-2となった後、大谷選手が50号を打って50本塁打・50盗塁の偉業を達成しました。

試合後のインタビューで大谷選手を敬遠しない決断について聞かれたら、シューメーカー監督はこう答えました。

"That's a bad move, baseball-wise, karma-wise, baseball-gods-wise. You go after him and see if you can get him out. I think out of respect for the game, we're going to after him. He hit the home run, that's just the deal. He's hit 50 of them. He's the most talented player I've ever seen. He is doing things I have never seen done before in the game and if he has a couple more of these peak years, he might be the best ever to play the game. As a fan, yeah, I wish I was in the stands, not in the dugout seeing it, but I'm proud the guys that were attacking him and not scared of him. That's how you should go after it.

It was a good day for baseball. Bad day for the Marlins.

「それは悪手だよ。野球的に、カルマ的に、野球の神様的に。勝負してアウトを全力で取りに行く。野球へのリスペクトとして、俺たちは勝負だよ。彼はそれでもホームランを打った、それが勝負だ。彼は50本も打っている。彼ほどの才能を持つ選手は俺は見た事が無い。彼は野球で行われた事が無い事をやっていて、ピークはまだあと数年も続くなら、野球の史上最強になるかも知れない。ファンとして、俺だってスタンドに居たかったよ、ベンチで見ているんじゃなくて。でも、俺は彼を恐れずに正々堂々と勝負に挑んで行った俺らたちの選手を誇りに思う。そうやってやるモンだろう。

今日は野球にとって良い日で、マーリンズにとって悪い日だ。」

敗戦インタビューとしても、監督の振る舞いとしても、スゲーカッコいい人で、選手たちに尊敬されている若手監督ってのは頷けます。

これは若手が育って来年につながる「いい負け方」ではないでしょうか?

以上