恩は遠くから返せ

田中角栄の人心掌握法

昭和の大宰相、田中角栄。
この人に関するエピソードから、恩は遠くから返せという言葉に迫ります。
『恨みは水に流せ、恩は石に刻め』と言います。
自分が苦しい時、困った時に、手を伸ばしてくれた人ほどありがたい存在はありません。
その恩義は、絶対に忘れてはいけないから、心の中の石に刻み込みたいものです。
ですが、「借りたものを今こそ返すぞ」とばかりの態度を取れば、相手は困惑します。
田中角栄は、そこのところをこう指摘しています。
人はソロバン勘定で物事を考える人間から離れていく。
恩を忘れないことは、絶対に大切なことだ。
だが、その恩義の返し方こそ、人間の真価が問われるところだ。
さて、角さんは何が真価の問われるところだと考えたのでしょうか。
「人から受けた恩を忘れてはならない。必ず恩返しをしろ。ただ、これみよがしに、『お礼に参上した』などとやってはいけない。相手が困った時、そんなときこそ遠くから、慎み深くさりげなく気づかれないように返すものだ」
人間の真価が問われるのは、受けた恩義の返し方にこそある、と角さんは言いました。
我々凡人は「返す時」に「お礼に参上した」とまではいかなくとも、ついつい「はい返したよ」とばかりに自分の足跡、魚拓を残しがちです。
インスタアピールといいますか。
そうではなく、相手にすら気づれないくらいに、慎み深く、さりげなく、自分もやったことを忘れてしまうくらいに気づかれないようにこっそりとお返しする、そのことが自分の徳を高めることになるのでしょう。
恩は遠くから返せ。
他人にわかってもらう必要はありません。
自分がわかっていればいいです。

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