成功を平らにする

成功に惑わない(赤木しげる)

生まれてこの方、古今東西の書物や漫画、映画や動画を漁りまくって来ましたが、一つだけ最も印象深かったものを挙げるとなれば、この話になりますかね…。「天」最終話の極み、ご存知、超人博徒、赤木しげるの最期のセリフをとくとご覧下さい。実は筆者自身も定期的に読み返す用にアップしました…。

※※※

赤木しげる
「たぶんお前はこう考えていた…アルツハイマーなんかになっちまって
なんて赤木しげるはツイてない…かわいそうだと…!だろ…?ところが…実はそうでもねぇ…!
そうかわいそうって訳でもねぇ…!上から下を見下すようにあっさりそう決め付けられちゃちょっと不愉快だ…
俺からしたら…原田…お前のほうがかわいそうだ…!」

原田克美
「はぁ…?かわいそう…?どうして…?」

赤木しげる
「簡単だ…お前も気づいているだろう…薄々は…!ろくに生きてねぇ…っ!
お前は 今 ろくに生きていないっ…!苦しむぜ…それじゃあ…死の際…死の淵で…!」

原田克美
「あ…?どういうことだ…?かわいそうとか…苦しむとか…ろくに生きてねぇとか…
何いってんだ?まるで分からねぇっ…!」

赤木しげる
「だから…積み過ぎたって事さ…!お前は成功を積み過ぎた…!」

原田克美
「おいっ おいっ 何を言い出すんだ…?悪いってのか…?成功が…!
「失敗してろ」とででも言うのか…?「勝つな」とでも…!」

赤木しげる
「ククク…そうは言わねぇ…勝つこと…成功は必要だ…!生きていく以上…
どうしたって成功は目指さざるを得ないっ…!それはいい加減に生きてきた…俺とて同様…!
何しろ死んじまうんだ…勝ってかないと…だから目指す…!目指すさ…!
それは仕方ない…ただ…
俺は成功を少し積んだらすぐ崩すことにしてきた…!意図的に平らに戻すようにしてきた…
実は成功はなかなか曲者でよ…一筋縄じゃいかない…
最初の一つ二つはまぁいいんだが…10・20となるともう余計…余分だ…!
体を重くする贅肉(ぜいにく)のようなもの…それを…お前はいいやいいやで無用心に積み過ぎた…!
動けねぇだろ…?お前今…動けねぇだろ…?満足に…!
まぁ…最初は必要な意味ある「成功」だった…勝つことによって人の命は輝き光を放つ…
そういう「生」の輝きと成功は…最初繋がっていた…!
なのに…どういうわけか…積み上げていくと…ある段階でスッとその性質が変わる…
成功は生の「輝き」でなく枷になる
いつの間にか成功そのものが人間を支配…乗っ取りにくるんだ…!
「成功」が成功し続ける人生を要求してくる…!
本当は…あえてここは失敗する…あるいはゆっくりする…そんな選択だって人にはあるはずなのに…
積み上げてきた成功がそれを許さない…!縛られている…まるで自由じゃない…
それはなんでも出来そうに見える暴力団組長…それも半端な組じゃない
関西で1・2を争う巨大組織の頂点…原田克美でも変わらないっ…!
原田…正直に言ってみ…!お前今窮窮としているだろ…?」

原田克美
「(…くっ…!)」

赤木しげる
「どんなに金や権力を手に入れたところで…実は窮窮としている…!
「成功」ってヤツは…人を自由にしないんだ…ハダカを許さない…!装うことを要求してくる…!
つまり…成功者…大物らしく振舞うことを要求してくる…!
となりゃあ…当然いちいちメソメソなんかしていられない…
ましてお前は暴力団組長…さぞや窮屈だろうぜ…!悲しいときに泣けず…おかしくても笑えず…
怒りがこみ上げても安々と爆発なんか出来やしねぇ…!
いちいち拳を振り上げてたら命がいくつあっても足りない稼業…我慢をしているはずだ…!相当…!
そんなストレスのかたまりみたいな日々を…お前は営々とこなしている…スケジュール通り…!
なんだそれ…?まるで分からねぇ…!ありのままの自分がどこにもねぇじゃねぇか…
金や家来をいくら持ってようと…そんなもん俺は…毛ほども羨ましくねぇ…
みすぼらしい人生だ…!
生きていると言えるのか…?お前…それで…!
お前は「成功」という名の棺の中にいる…!
動けない…もう満足に…お前は動けない…!死に体みてえな人生さ…!」

自分はどうだ

…赤木しげるの境地に、今日の自分は一歩近づけたのか?

成功を平らに戻す

金や権力、家来をいくら持っていようと、そんなもん毛ほども羨ましくねえ

忙しいという字は
心を亡くすと
書くぜ…

自由な人生を!