殺人罪(刑法199条)以外で死刑になる罪
人を殺す以外のことで死刑になることは現代社会においては存在しますか?
我が国では、以下の罪を犯した場合、原理的には人を殺すことはおろか、人に対して直接的な攻撃を加えなくとも死刑になる可能性があります。しかしながら、これら実行したら間接的にせよ人が死ぬような犯罪なので、「ヒトゴロシ!」と罵られることは間違いないでしょうね。
以下、条文は刑法です
① 内乱首謀(77条)
国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
一 首謀者は、死刑又は無期禁錮に処する。
内乱を起こした首謀者は死刑になる可能性があります。ただし、反乱というのは成功すれば反乱ではありませんから、命がけで頑張れば一発逆転も可能です。
② 外患誘致(81条)
外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。
本邦で、法定刑が死刑しかない犯罪はこれだけです。反乱は自分で努力していますが、コイツは外国頼みという自助努力にかけるところが減点ポイントです。正に外国のイヌ。
③ 外患援助(82条)
日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑又は無期若しくは二年以上の懲役に処する。
敵が攻めてきたら寝返ったパターンです。これは濃淡があるので誘致者よりは幅がありますが、最高刑はやはり死刑です。裏切り者に国家は冷たい。
④ 現住建造物等放火(108条)
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
放火です。これは建物が燃えやすい木造家屋主体の本邦では江戸時代から重罪として扱われる伝統があります。また殺人は未必でも故意の認定を取らないといけないので、その辺の処理が面倒くさい説もあります。
この罪状では、唯一、死者がいるものの殺人の罪に問われないで死刑判決が確定している事件(ただし、死者は多数あり)と、死者がいないにもかかわらず死刑を求刑した事件があります(首謀したとされたが、放火は無罪となった)。
⑤ 激発物破裂(117条)
火薬、ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて、第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を損壊した者は、放火の例による。第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を損壊し、よって公共の危険を生じさせた者も、同様とする。
放火の爆発物バージョンです。
⑥ 現住建造物等浸害(119条)
出水させて、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車又は鉱坑を浸害した者は、死刑又は無期若しくは三年以上の懲役に処する。
放火の水責め版です。何が違うかといえば、艦船は出水の上にいるから関係ないので除外されているわけですね。
また、特別法である爆発物取締罰則にも使用と使用させた罪について、最高刑を死刑としています(条文は同規則)。
治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタル者及ヒ人ヲシテ之ヲ使用セシメタル者ハ死刑又ハ無期若クハ七年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス