本当に優しい人

優しい人は怒らず去っていく

これは本当過ぎます。

私の職場に鈴木さん(仮名)という物腰の柔らかい同僚がいました。そう、過去形です。彼の人当たりの良さは折り紙付きでお客様からもとても人気がありました。特に高齢者への配慮は一流で随分と学ばせていただきました。

そんなある日、彼は突然にいなくなりました。まあ支店長はワンマンなお方で皆多かれ少なかれストレスの溜まる日々だったとは思います。彼とは懇意にして頂いていたのでメールやLINEなど日々交わしていました。

失踪後に私は心配になり直ぐにメールを彼に送ります。直ぐに返信がありました。

「何かを口にすると愚痴になったり、またこういったやりとりをすると皆んなに情が湧いて辛くなる。あの支店長の元にいる限り将来的な望みは一縷もないよ。我慢の限界点に到達した、それだけの事。皆んなへの感謝の気持ちは君から伝えておいてくれ。」

それが彼との最後の通信となります。その後も何度かLINEなど送りましたが[既読]が付くことは一切なくなりました。優しい人は我慢の限界点までは表情を変えないんだと思いました。辞める前日までにこにこしていましたので。

人生そのものも、かようなものと考えます。一瞬の邂逅。そのような人こそ、強い印象を残す。その時を、濃く集中して生きる。そういう人に、わたしもなりたいです。