私見ながら銀行家と投資家の双方の世界観を見てきた筆者がその違いを論じてみます
おはようございます。
2016年11月の銀行家と投資家に関する配信記事です。
企業に対するステークホルダーとして、よく銀行と株主が出てきます。
両者は会社の業績にその投融資効果が左右されるという意味で同じ利害を持っていると見えがちですが、実はそうではないという話をしたいと思います。
銀行にとって、会社に成長してほしいという期待は実はそんなにありません。
それよりも、大事な大事な貸金を、一円の損もなく元本を回収したいというインセンティブを持っています。
何しろ貸し付けているお金は預金者の大事なお金なのです。
自分のお金ではないのです。
利子は少なくても良いのです。
高い金利が取れるのだから、少々の元本の毀損はOK!
という論理は銀行には全く通用しません。
100万円貸して、元本は90万円しか戻って来なかったけど別途利息と手数料で20万円もらったとします。
これはIRR(投資回収率)の考えで見れば10%の利回りで美味しい投資ですが、銀行屋はそうは考えません。
元本が10万円毀損したということを監督当局に申告すれば、同様同類の融資には全て10%の引当金を積まなければならなくなり、銀行の自己資本など簡単に吹き飛び取り付け騒ぎになるからです。
そういうわけで、銀行は極力元本の回収リスクを排除しようとします。
それは銀行イコール預金者の自己保身の当然の帰結なのです。
自己保身というととても世知辛いような書き方に見えますが、みなさんも、銀行にはお金を「預ける」と思っているでしょう?
この銀行に、「預ける」という形、消費寄託という考え方こそが、銀行に預けたお金がもどってこなくなることなどありえない、という銀行システムに対する無限の信頼に繋がっているのです。
誰も、銀行に自分のお金を「貸した」とはいいません。
普通、他にお金を渡す場合、それは売買の対価として渡すか、貸し付けるか、投資するか、そのどちらかです。
なのに、銀行だけは、自らの金庫のように「預ける」というのです。
銀行家にとって元本は絶対なのです。
その次に利息はそれは高ければいいけど、そんなには求めないわけです。
企業の成長は二の次、まずは元本利息の適切な支払いが大事ということなのです。
以上このすべては、これまで述べてきた「(みなさんのようないたいけな)預金者からの信頼」を守るためなのです。
つまんないですね。
そうです。
通常の商業銀行というのはつまらない商売なのです。
そのつまらなさが銀行に対する預金者の信頼につながっているのです。
投資家は違います。
自らのリスクで資金を張ることができます。
銀行家も投資家もやったことがある筆者からの私見を込めた説明は以上です。
(平成28年11月7日 火曜日)


