自立から相互依存へ
7つの習慣のエッセンス
書籍『7つの習慣』では、人の成長を「成長の連続体」という概念で示しています。成長の連続体は、人の成長ステージとして、「依存」状態からはじまり、「自立」へと至り、最終的に「相互依存」を実現するという3つのステップが紹介されています。
まず人の成長ステージを示す3つのステージがそれぞれどのような状態なのか、最終的に目指す相互依存とは何かを解説します。
「依存」とは?
「依存」とは、他者に頼って自分では何もできない状態です。
例えば、小さい子供の頃は、保護者の助けがなければ生きていくことはできません。肉体的・物理的・経済的など、ほぼすべての面で依存しています。そこから、肉体的には徐々に成長します。また、就職などを通じて経済的な依存からも脱却する人が多いでしょう。ただし、社会に出ても新人のうちは上司や先輩から仕事を教えてもらわなければ何もできないでしょう。
こうして、さまざまな面で我々は徐々に依存状態を脱します。ただ、肉体や経済、スキルなど物理的な依存とは違うところで存在するのが精神的な依存です。
精神的に依存している状態とは、望む結果を手に入れることを周囲に頼っており、責任を引き受けていない状態です。周囲や環境に振り回されている状態であり、依存状態にいる人は、「あなたに面倒を見てほしい」、「結果が出ないのはあなたのせいだ」など、「あなた」や「状況」を主語にした言葉を使いがちです。
「自立」とは?
前述のとおり、人は依存状態のところから、やがて一人でできることが増えて、自立します。最初は歩けなかった赤ちゃんも、いずれ一人で歩いて遠くに行けるようになります。最初は仕事の右も左もわからなかった新入社員も、自分で判断して仕事を進めることができるようになるでしょう。このように自立は、自分で考え自分で行動できている状態をいいます。
『7つの習慣』で扱う精神的・人格的な自立も同様です。自ら考えて選択する、そして選択の結果を自ら引き受けることが精神的な自立です。自立した人は、「私はそれができる」、「〇〇は私の責任だ」「私が取り組む」など、「私」を主語にした言葉遣いをします。自立することで、状況や他者に対する依存から解放されて、周りの状況に左右されず、自分から働きかけることができるようになります。
「相互依存」とは?
「自立」は「依存」に比べると成熟した状態です。自立した人は、自分の力で目標達成や問題解決などさまざまな物事に対処できます。しかし、自立した人が得られる成果は、自分の能力の範囲内です。たとえ自分の能力を最大限に発揮できたとしても、得られる成果はせいぜい日頃の1.5倍程度ではないでしょうか。自分一人でどんなに頑張ろうとも、個人の力で5倍、10倍の成果を上げるのは、現実にはまず期待できないことです。
『7つの習慣』では、自立の先に「相互依存」という成長段階があるとしています。日本語で“依存”という単語はネガティブな印象があるかもしれませんが、相互依存とは、言い換えると相互協力であり、相乗効果の発揮です。
相互依存に達した人は、同じように自立した他者と好ましい人間関係を築き、他者と協力し合うことで、自分一人が生み出す結果をはるかに上回る結果を出せるようになります。
相互依存の人は「私たちはそれができる」、「私たちは協力し合える」、「私たちがお互いの才能と能力を合わせれば、もっと素晴らしい結果を出せる」など、「私たち」を主語にした言葉を使います。自立した人同士が協力することで、お互いの長所を活かし補完し合い、相乗効果を発揮できる状態が相互依存です。