民事訴訟法第3問

問題

 別荘地で知られる甲町の住民たちは組合契約を締結し、土地(山林)、資金など出し合って、ある山林(乙)を管理し、自分たちのレジャー施設として利用していた(以下この組合をAという)。同時に、この組合には、代表者(組合財産につき包括的な代理権を有する)、書記、会計、監査などの役員の選任や、財産の管理に関する規約が存在し、運営は組合員の多数決で行われ、各住民の転出・転入の度に組合員の地位は売買により引き継がれ、新たに甲町に転居してきた住民の大部分も、一定額の資金を拠出してAに加入していた。
 ある日、リゾートマンション開発業者Yが、Aに対し、乙の一部を買い受けたとして、分筆のうえ所有権移転登記手続をするよう要求してきた。YはA代表者Bの記名・押印のある売買契約書などを示したが、Bは身に覚えがないという。そこで、Aは、乙がA側に帰属することの確認を求めて訴えを提起することにした。
 この場合、原告を誰にするのかにつき、どのような法律構成が成り立ち得るか、検討しなさい。
(神戸大学法科大学院 平成17年度 第2問)

解答 2022年7月7日(木)

第1 ①A組合が原告として訴訟遂行する方法
1 A組合が原告となるためには、民法上の組合に当事者能力が認められる必要があるが、民法上の組合は権利能力を有せず、原則として当事者能力が認められない(28条)。もっとも、組合が社団(29条)に含まれれば、例外的に当事者能力が認められるが、この点、A組合が社団に含まれるか問題となる。
2 社団の趣旨は、民法上権利能力がなくても、独立の財産を有して社会活動を行っており、私法上の紛争主体となり得る者について、紛争解決という見地から当事者能力を認める点にある。よって、民法上の組合も一定の独立の財産を有し(民法676条、677条)、社会活動を行っているため、私法上の紛争主体として民事訴訟法上権利能力を有しない社団と民法上の組合を区別する必要はないと解する。従って、民法上の組合も団体としての実体が認められ、かつ、代表者又は管理人の定めがある場合には社団に含まれると解する。
3 本件A組合では、組合契約でBを代表者とし、包括的代表権を与えており、A組合はBを代表者とする定めがあるといえる。
4 次に、A組合には、団体としての実体も認められるか問題となる。この点、①団体としての組織を備えていること、②多数決の原則が行われていること、③構成員の変動が団体の存続に影響を与えないこと、④団体として主要な点(代表の方法、総会の運営、財産の管理等)が確定していることが必要と解する。本件については、①A組合は書記、会計、監査などの役員の選任が行われており、一定の組織を有し、②運営は組合員の持分による多数決で行われ、③各住民の転出・転入の度に組合員の地位は売買により引き継がれ、新たに甲町に転居してきた大部分の者も、一定額の資金を拠出してA組合に加入しており、構成員が変動してもA組合という団体の存続に影響ないといえ、さらに④代表者の定めがあり、財産の管理に関する規約が存在しているなど、団体としての主要な点も確定している。従って、A組合には当事者能力が認められる。
5 なお、組合に限らず法人格を有しない社団は実体法上権利能力を有しないから、当事者能力が認められる場合であっても、実体法上の権利能力を取得するものではない。よって、当事者適格までは認められない。そこで、A組合は、弊害が生じるおそれがなく、合理的必要性がある場合に認められる任意的訴訟担当の地位に就くものと解する。
6 以上より、A組合は原告として訴訟追行できる。
第2 ②A組合員全員が原告となる方法
1 この場合、固有必要的共同訴訟(40条)として、A組合員が全員揃わなければ当事者適格が認められないか問題となる。
2 固有必要的共同訴訟となるか否かの判断基準は、民事訴訟が実体的権利の実現手段であることに鑑み、民事実体法の定めを基本としつつも、訴訟経済や手続保障の観点から、訴訟上の独自の要素も加味して考えるべきである。本件においては、A組合財産は、組合員の合有に属するし、組合員全員の手続保障を図る必要がある。よって、固有必要的共同訴訟に当たるといえ、A組合員が全員揃わない限り、当事者適格が認められない。
3 以上より、A組合員全員が揃った場合に限り、訴訟追行できる。
第3 ③Bが原告として訴訟追行する場合
1 A組合の代表者Bが単独で当事者適格を有するか問題となる。この点、任意的訴訟担当である選定当事者制度(30条)を利用し、Bが単独で原告となる方法が考えられる。しかし、A組合に当事者能力が認められる場合(29条)、選定当事者になることはできない(30条第1項①)。
2 そこで、A組合の規約に基づき、任意的訴訟担当としてBが単独で原告として訴訟追行できるか問題となる。任意的訴訟担当は、その必要性がある場合で、①弁護士代理等の制限を潜脱するおそれがなく、②訴訟担当を認める合理的必要性がある場合に認められると解する。
3 本件では、BはA組合の規約により、組合の財産について、包括的な代理権を有している。また、BはA組合の代表者として、A組合の訴訟について真剣な訴訟追行を期待しうる。よって、①依頼者であるA組合員の利益が弁護士代理等の制限を潜脱して害されるおそれはない。次に、A組合の組合員全員が原告となるのは煩雑であり、それぞれの負担も大きく、共同訴訟の簡素化標準化を図るべきである。そして、BのA組合を代表する地位に鑑み、BはA組合全体の権利実現についての法的利益を有する当事者適格を有する。よって、②Bの訴訟担当を認め組合員の手続保障を図る必要がある。
4 以上より、A組合の代表者であるBは任意的訴訟担当として単独で原告となり、訴訟遂行することができる。
以上(1,901文字)

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