世界中の自動車がEVになってしまったらいったい電気は誰が作るのだろうと考えた話(SDGsに物申すシリーズ)(2021/04/22)

燃費が悪いと蔑まれた名車RX-7

▼世界は、脱炭素だグリーンエネルギーだと騒がしい令和3年の世の中ですが、もともと、内燃機関というもので動く、いわば「動く工場」として蒸気機関車やガソリン自動車が登場してからだいたい200年以上、内燃機関という仕組みはエネルギーを取り出す方式として長足の進歩を遂げてきたわけです。

▼エコカーといえば燃料電池車(FCV)や電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)が注目されているようですが、静かなところで今ディーゼルエンジンが熱いです。汚い、うるさい、業務用、といったディーゼルエンジンのイメージがクリーンでお洒落なものに変わってきているのです。もともと、ディーゼルエンジンで使うのは精製度の低い重油あがりの燃料ですから、ガソリンのように揮発性は低いので、いきなり燃える、爆発するわけではないので、噴霧して火点にプシューと吹きかけないと燃えないのですが、そのうまいこと燃やしてさらに有害廃棄物も少ないフィルターを実装して、年々厳しくなっていく廃棄物規制に対応していく歩みのほうが、いきなり世界中の車をEV(電気自動車)に!と叫ぶ向きよりよほど現実的で建設的な議論の方向だと考えています。

▼PMなんとか、NOなんとか、といった粒子や化合物の排出量が少なく、厳しい排ガス規制をクリアしたクリーンディーゼル車がハイブリッド車並みの燃費を実現し、ひそかに人気急上昇中なのです。電気自動車とは、いわば筆者のような少年少女がかつて走らせたり飛ばしたり水に浮かべて動かした、あの「ラジコン」と同じ原理です。いわば乾電池の代わりに、充電が数千回できるけどそれを作るのにはめちゃくちゃCO2を排出し、かつ超重い「リチウムイオン電池」というバッテリーを装着して走る等身大のラジコン車を、世界中で走っている、自走する小さな工場であるガソリン/ディーゼル自動車と置き換えようという、壮大な技術的「退化」だと思うのですが、筆者の見解がそうではない、とお考えの方の反論をお待ちしております。

▼ディーゼル車は、いままで、貨物用など一定以上の排気量の車体モデルに搭載することが主でした。ディーゼルエンジンはその構造上、一般にガソリンエンジンより割高です。それは、ディーゼルエンジンは最初に空気を圧縮したところに、軽油を霧状に噴射して着火するという方式ですので、空気を強く圧縮して高温にしておくところでどうしても部品を丈夫に作りこまないといけないという制約があるのです。しかし、それが、重油というそこらへんにあるエネルギー源から効率よくエネルギーを出力させ、廃棄物を一定量以下におさえる技術の見せどころでもあるのです。電気がクリーンなエネルギーであることは論を待ちません。ゼロ・エミッションの旗手なのかもしれませんし、たしかに、電気自動車は排気ガスも二酸化炭素も出しません。でも、その電気自動車に充電する電気はどこから供給され、作られるのでしょうか。作って充電する電気を、今と同じように火力発電所で作って、そして壮大な送電線設備で消耗させながら運んで、そして充電して使う、このほうが、よほど総量としてのCO2負荷は増すだけではないのでしょうか。このあたりについての、理論的な方策を全く耳にしないので、最近とみに言われるESGだのSDGsだのに飛びつく方々の熱量には正直距離を置きたいな、もう少し勉強した「分かる人」の話を聞きたいなと感じております。

▼200年の歴史を誇る、内燃機関、その頂点に君臨するガソリンピストンエンジンでの動力機構は、最初から空気とガソリンを混ぜた状態の混合気体を圧縮して点火し、着火も容易(すぐに爆発する)ので、小型のエンジンにも向いているのです。

▼さて、このガソリンエンジンを上回る、(環境保護団体には嫌われる)汎用的なディーゼルエンジンを小型化し廉価にするため、日本の広島にあるマツダという会社を中心に改良を重ねました。伝説のロータリーエンジンを世界で初めて開発した会社にふさわしく、開発方針はまさに逆転の発想で、あえて空気の圧縮比率を下げてエンジンに過大な負荷がかからないようにするというものでした。そうすることで、ディーゼル車で敬遠されていた振動や騒音、エンジンピストンや車軸といった部品全体にかかる負荷も低減することに成功したのです。もちろん、圧縮比を下げるとエンジンへの点火がうまくいかないといったリスクも高くなりますので、その塩梅が大変重要で難しいところだったわけですが、きめ細かく軽油を噴射するインジェクターの改良と合わせ、燃料がシリンダー内で均一に燃焼するよう工夫していったわけです。これにより、燃費も格段に向上し、ハイブリッド車並みの燃費を実現するに至ったのです。古い技術を改良し、革新的な製品を生み出す。簡単だから電気~と逃げを打つのではなく、モーターやバッテリーといった別の技術の力ではなく、エンジン本体の改良で高みに達するというロマンが詰まったお話でした。

▼RX-7というディーゼルエンジンカーに乗った遠出しことがありますが、男2人というシチュエーションも相まってそれは素晴らしい加速度だったことを懐かしく思い出す筆者からは以上です。

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