(2021/03/05)新電力会社の電気料金請求が異常に高騰した背景

▼電力自由化により、日本の消費者は原則自由に電気をいろいろな会社から買うことができるようになりました。ここで参入してきたいわゆる新電力会社は、いわゆる東京電力や九州電力といった既存電力大手に比して、自社で発電施設を持たない場合が多く、生産コスト、維持管理コストをあまり負担せずに済みます。確かに、このまま身軽な(重いコストなしに)低価格で市場から電力を買取り(仕入れ)、そして顧客に必要経費を乗っけて電力を売却できれば、消費者としても大手電力会社より安い電力を売りにできます。これは市場原理ですので当たり前のことです。

▼このように、日本政府も電力市場の民主化ということで電力自由化を進めてきたわけですが、実際に大雪などで太陽光発電所の発電ができなくなるなど、想定を超える電力市場への電力提供が止まった状態になると、当然電力の市場価格(仕入れ価格)は跳ね上がります。今回は、この電力自由化の副作用がこんな形で出たということです。このように、市場価格に連動した電力単価を直接消費者に提供する「市場連動型プラン」の契約者に対して、異常高騰分を自社で負担すると発表している新電力会社もありますが、そのようなことは長続きしませんし、そもそもこのような無理を承知で推し進めては、彼らの標榜する持続可能な社会など夢のまた夢とも揶揄されてしまうでしょう。せっかく獲得した顧客を逃したくないというのはあるでしょうが、変な契約に縛られた事業者が先に事業の持続性を保てなくなってしまっては元も子もありません。

▼「これまで使用していたサービスよりも安くなります」というだけのサービスが提案されたとき、そのときには、何を失ってその価格分を受け取るのか、賢い消費者はよく考えるべきでしょう。価格部分だけに目を奪われず、安さの理由を知ることが大切です。「なぜ他より安くできるか」を契約者自身が把握しておかないと、契約者の大切なものやリスクを消費者側がかぶることになっていることがほとんどであり、そのリスクが顕在化したときに「知らなかった」では救済されない事態になります。要するに、理由のない安さはない、認識すべきなのです。