保育園補助金不正受給

新たな補助金不正受給の舞台となった「成田コスモ保育園」

 東京都内21カ所で認可保育所などを展開するコスモ保育園グループの運営会社「コスモズ」(本社・東京都小金井市)が、杉並区での新園開設時に区から約2500万円の補助金を不正受給していたことが、関係者への取材で分かった。(花井勝規)

◆運営会社は謝罪と弁済の意思

 同社は三鷹、小平両市で保育所計2カ所を開設するにあたり、2000万円超の補助金を不正受給していたことが発覚。1月に両市に謝罪した。同社は、さらに不正な点がないか自主的な内部調査を行い、新たに杉並区成田西の区所有地に2017年4月にオープンした「成田コスモ保育園」(定員122人)の不正受給が発覚した。今月15日、佐野浩代表取締役兼理事長(80)らが調査を依頼した弁護士作成の報告書を区に提出。謝罪と弁済の意思を伝えた。同社の一連の不正受給額は計約5000万円となった。

 報告書によると、同社は植栽など補助対象外の外構工事費を、補助対象となる園舎などの本体工事費に組み入れて補助申請額を水増ししていた。その際、佐野理事長が工事見積書に金額の変更を書き込むなど指示していたとされる。こうした見積金額の操作について、報告書では「意図的な補助金不正」と結論づけた。

 区の担当者は「報告書の内容を精査した上で、関連資料の提出を求め、厳正に対処したい。過大受給分は速やかな返還を求めていく」と話している。佐野理事長は5月までに辞任し、新体制へ移行するという。

 同社は今月に入り、先に不正受給が判明した三鷹、小平両市に、改めて経緯などをまとめた報告書を提出した。だが、両市からは「報告書は弁護士の調査結果に会社側が異論をはさむなど整合性に欠ける」「不正受給の原因がはっきりしない」などと指摘を受け、再提出を求められた。

◆工事費の一部を広告料などとして還流か

 コスモズが三鷹市へ提出した調査報告書によると、同社が市内に新設した保育園の内装工事を請け負った会社は、コスモズの佐野浩理事長が編集委員を務める「市民運動新聞」に3年間で計約300万円の広告料を支払っていた。

 広告の掲載は工事契約直後に始まっており、水増しした工事費の一部を佐野氏側に還流させたとみられる。

 報告書によると、三鷹市の事例では補助対象外の外構費を本体工事につけかえるなどして、約860万円を不正受給していた。ほかに一般経費の増額で300万円を不正受給し、工事業者に支払っていた。これが広告掲載料名目で市民運動新聞に支払われていたと指摘した。さらに市民運動新聞から「原稿執筆料」などの名目でコスモズに資金が移動したケースもあったとし、支払われた工事費を「還流させているように見える」との見解を示した。

佐野浩氏が編集委員を務めた市民運動新聞。西岡真一郎前小金井市長の辞職についても伝えていた(複写)

佐野浩氏が編集委員を務めた市民運動新聞。西岡真一郎前小金井市長の辞職についても伝えていた(複写)

市民運動新聞は佐野氏らが小金井市で1983年に創刊。2年前に法人化し、市内を中心に月3回、約8000部を発行している。発行元は「コスモズ」本部と同居し、コスモズが工事を発注した業者の広告掲載が複数、確認されている。