〇〇してくれない

「〇〇してくれない」という言い方は、日常の中でつい口にしてしまいがちな表現ですが、その本質をよく考えてみると、相手に責任を押しつける響きを持っています。この言葉は、自分の思い通りに物事が進まないことを「相手のせいだ」と短絡的に片づけるニュアンスを含んでおり、いわば他責思考の一つです。他責思考が続くと、問題解決の糸口を自ら見出すことが難しくなり、気づかぬうちに自分自身の成長や人間関係の円滑さを損ねてしまう危険があります。
たとえば職場で「上司が説明してくれない」「同僚が協力してくれない」と考えると、どうしても不満や苛立ちが募ります。しかし、このような考え方をしている限り、自分には何もできないという無力感に囚われやすくなります。一方で、「説明が足りないように感じるので、自分から質問してみよう」「協力を得られるように、まず自分から声をかけてみよう」と発想を転換すれば、主体性を発揮しながら状況を変える力を取り戻せます。つまり、同じ出来事でも「してくれない」と嘆くのではなく、「どうすれば良い方向に動かせるか」を考えることが、自分と相手の双方にとって建設的な道を開くのです。
もちろん、人間関係の中で不満や要望を持つこと自体は自然なことです。ただ、その伝え方次第で結果は大きく変わります。「〇〇してくれない」と責める口調ではなく、「こうしてもらえると助かります」「私はこうしたいのですが協力いただけますか」と表現すれば、相手にプレッシャーを与えず、前向きな依頼や提案として受け取ってもらいやすくなります。相手も防御的にならずに耳を傾け、対話の余地が生まれやすくなるでしょう。
大切なのは、自分の感情や希望を「相手のせい」にしてぶつけるのではなく、「自分はどうしたいか」「自分は何ができるか」という軸に立って表現することです。そうした意識を持ち続けることで、他責思考から脱却し、より主体的で成熟したコミュニケーションが可能になります。そして、それこそが信頼を深め、協力的な関係を築いていくための確かな基盤となるのです。
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