自分の身が今あるのは誰のおかげであるか

根本博元陸軍中将は、復員後、中国大陸で国民党軍が中国共産党軍に敗北し、台湾に逃れたことを知ると、昭和24年(1949)6月に、家族に「釣りに行って来る」とだけ言い残し、宮崎県延岡から漁船に乗って台湾に密航し、7月に台湾基隆に到着し、国民党軍の軍事顧問に就任した。
その後、中共軍が金門島に侵攻すると、根本が立てた作戦で、中共軍の乗って来た木造船を焼き払い、海陸両方から中共軍を包囲殲滅し、中共軍の台湾への侵攻を防いだ。
台湾に密航したのは、中国大陸での邦人と日本軍人の速やかな日本への帰還に関して便宜を図ってくれた蒋介石への恩義に報いるためだったが、結果的に台湾を救うことになった。
行きは密航だったが、昭和27年(1952)に飛行機で帰国した。
帰国後、妻に「随分長い釣りでしたね、さぞかし沢山魚が釣れたことでしょうね」と皮肉を言われたそうだ。
家族も薄々、「失踪」の真相を知っていたと思われる。
こういう日本人がいたことを誇りに思う。

今の自分があるのは誰のおかげであるか。

富貴の道、楽な道が現れた時、それを一身のためのみに掴みにいくのか、そうしないのか。良く自らの胸に問うがよろしい。

以上