恋愛回想録 -1-(2021/06/17)

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「恋愛回想録 -1-」

あれは、23歳。またしても黒歴史の中にある。
その人は不思議と女性を惹きつける何かがあるのかもしれない。
彼は花ちゃんと呼ばれていた。
花ちゃんは彼女がいて、私と出会ったのはその彼女と別れてすぐだった。
その彼女は既婚者で、彼女の家で飼われている犬の名前は「花ちゃん」だった。
彼女と別れてすぐの時に、たまたま私と某チャットで知り合い、意気投合して会うことになった。
私は特に何かを期待していた訳ではないし、何も目的なく会うことにした。
なのに、会ってしばらく話をする内に私は彼に惹かれていった。
今となっては何が特別良かったのか判らないけれど、顔とスタイルが良かった事は覚えている。
彼は建設現場で働く仕事をしていた。
大学時代は建築士を目指していて、現場監督の資格とかも持っていたりする結構ガチで建設に携わっている人。
そして一度結婚していたらしく、二人の子供もいる人だった。
子供は元奥さんが引き取っていて、彼は一人暮らしだった。
私は度々彼の家に居座っていたりしたけれど、彼はそれを「同棲ではなく同居」だと言っていた。
その理由は、彼が既婚者の彼女とすぐに寄りを戻したから。
そして私に彼は「君の事を好きなのか判らない」と言っていた。
彼の家に居付くようになって分かったのは、彼がどれ程彼女を愛しているかという事。
彼は本気で彼女と付き合っていた。そして結婚も考えていたのだろうなと思う。
そんなに好きな彼女が居るのに、彼の周りには沢山の女性が居た。
私が居付くようになっていても、私が数日実家に帰ったりする日は、他の女性が家に泊まりに来ていた。
私は物凄く嫉妬していたけれど、大体が私自身も大勢いる「彼女ではない女性たち」の中の一人で、他の人達は割り切っている人ばかりのようだった。
彼の周りに女性が多いのは、彼がとても不安定な恋愛をしていたからなのだろう。
不安定な恋愛、既婚者の彼女、先の見えない不安。
どんなに辛かったのか。
今になって気持ちが分かるのは、やはり私も「自分が独身で彼氏が既婚者」という関係を経験しているからなのだろうか。
でも当時の私には理解ができなかった。
元々の私は、「不倫するくらいなら離婚してからにしろ」と思っていた。
既婚者が恋愛なんて、しても良いわけがない。
既婚者の彼女が、自宅で飼っている犬の名前に不倫相手の名前を使うなんて、どれだけ自分の家族を蔑ろにしているのか、本当に理解に苦しんだ。
そんな彼女を好きな彼の事も理解不能だった。
私は、悲しいけれど自分が好かれていないのは、日に日に感じていた。
私のことは好きじゃなくても良いけれど、もっとちゃんとした人と付き合えば良いのに・・・。

一方で彼は自分の子供に会いたがっていた。
年に一度、元奥さんからの年賀状で成長した我が子の姿を見られるだけで、会うことはなかったみたいだった。
当時の私には彼氏がいた。
二人目の彼氏だ。
その彼氏もバツイチで子供がいて、会うことは許されていなかった。
彼氏は私に、「子供に会えない辛さは子供がいないと判らないよ。」と言っていた。
しかしその彼氏はお薬中毒だったので、そりゃ会えないのは当然だわと思っていた。
花ちゃんも、会えなくて当然だった。
離婚原因は浮気だった。しかも、その既婚者の彼女との浮気。
今でもその浮気相手と関係があるのだから、子供に会える訳が無い。
そう思いつつ、それでも会いたいのだろうなと思った。辛いのだろうなと。
でも、花ちゃんが無類の女好きは治りそうにない。
私は、付き合ってはいないけれど好きな人である花ちゃんと、一緒に居られるだけで良かったので家に居着いていたけれど、段々虚しくなっていった。
そして花ちゃんも、私の嫉妬に嫌気が差していたのだろう。
花ちゃんは、新しい女性のお友達を家に呼び込み、私にはしばらく家に来るなと言った時があった。
それまでも何度か同じことがあったので、特に何も思わずに実家での日々を過ごしたけれど、そろそろ会いたくなって連絡したら、家に来ても良いよという許可が降りた。
なので私は花ちゃんのお迎えで家に行った。
車の中で花ちゃんは、家に女性ものがいくつかあるけれど気にしないでと言っていた。
いつもの事だから大丈夫と答えた。
でもそれはいつもの事ではなかった。
いつも以上に、そこに私が居着いているのと同じくらいの荷物が家にあり、明らかに私はもう排除確定になっている様子だった。
そしてその日1日放置状態にされて、彼はチャットの人と熱心に会話していた。
彼がトイレに立ったときに、少しだけパソコンを盗み見て私はとても悲しい状態になった。
彼がチャットしていたのは彼の周りにいる女性たちの中の一人で、その人に彼は「もう◯◯(私)は来ないと思うww」と書いていた。
もう私はこの部屋には来れないんだなと思い、その日泊まらず実家に帰った。
その日から彼の家には行かなくなった。

それから一年ほど経ち、度々出会ったチャットで見かけるけれど声はかけなかった彼に、ある日声をかけられた。
「元気にしているの?」と聞くと、元気にしていると返ってきた。
「彼女は元気?」と聞くと、知らないと返ってきた。
どうやら不倫は終わったらしい。
私は少し安心して、「ちゃんとした人と付き合ってくださいw」と送って会話は終わった。

度々思い出すこの人に、私は空を見て話しかける。
元気ですか?今はどこに住んでいるのですか?好きな人には巡り合いましたか?
今、幸せですか?