(2021/02/26)資本金制度と中小企業税制について

▼旅行業日本最大手のJTBが資本金を現在の23億円から1億円に減資するとのことです。なぜそんなことをするかといいますと、資本金が1億円以下になると、税制上「中小企業」の扱いになり節税メリットが大きくなるのです。本件、日本のマスコミには、スカイマーク、毎日新聞社に続く、旅行最大手の中小企業化は論議を呼びそうだといった書きぶりになっていますが、もともと日本の大手新聞社は、日刊紙ということで軽減税率を適用してもらったという恩義があり、どうもそこだけを批判するのはダブルスタンダード(二重の基準)ではないかと思います。

▼そもそも資本金制度とは、企業の財産的元手であり、株主資本の中に含まれる項目の一つであるにすぎないところ、JTBの2020年3月期の連結売上高は1兆2885億円と控えめにみても巨額です。従業員数もグループ連結で約2万7000人に上るため、一般人の常識として、同社が中小企業とは到底思えません。しかしながら、株式会社が資本金を1億円以下に減らすと、売上高や従業員数などとは関係なく、税制上は「中小企業」となります。これは、経理項目の一つをもって画一的処理にしようという制度設計側(官僚側)の怠慢であって、かような、責任を取りたくない体制側の思惑をあざ笑うように、この手の不適切な事例がまかり通ることになります。

▼ルールはルール、これが現在の仕組みということではありますが、これでは、本来の大企業が資本金をあえて1億円に抑え、税法上の中小企業になるケースが乱立するのも当たり前です。例えば、スカイマークは90億円の資本金を1億円に減資。毎日新聞社も3月に、現在の41億5000万円から1億円に圧縮する予定です。

▼さらに、そもそも株式会社ではなくて中小企業を想定している合同会社の形で企業を設立し、資本金を極限まで小さくする(例えば1円とするなど)事例も散見されます。アマゾンジャパン合同会社やグーグル合同会社、合同会社西友といった会社を思い浮かべる人も多いかもしれません。

▼国税庁の最新の統計によると、資本金1億円超の大企業は18年度に1万8810社となり、前年度から516社減っている。統計がさかのぼれる11年度(2万4380社)から、実に7年連続で減少しています。資本金を1億円に減らした際の税務上のメリットは依然大きく、大企業に赤字でも課税する『外形標準課税』からは2019年度以降も適用が除外されているほか、『欠損金の繰越控除』も従来通り適用できるのです。

▼ジェンダーフリーとか機会の平等とか、いろいろと平等議論が喧しい(かまびすしい)昨今の世の中ですが、いっそのこと、中小企業税制に一本化したほうがすっきりしてかつ徴税の手間も減るのではないかと考えております。形式的にも実態的にもThe中小企業の当社からは以上です。

中小企業の例(長崎県対馬市、株式会社TU-VA)