「最後の晩餐はみかんの缶詰で良い」
「最後の晩餐はみかんの缶詰で良い」
昨日そんな事を言い出した夫ちゃん。 色々悩むことが多くて、特にお金関係で。かなりなピンチ状態で、どうも辛そう。 私と夫ちゃんは似ている。価値観とか物事に対する感情の動き方とか。そういうのが似ているから、結婚を決めたと言っても過言ではない。 でも最近、それだけじゃない事が少しずつ判ってきた。 今までの人生での経験、辛い思い、ひどい仕打ち。それらの経験からくるストレスの耐え方。 今までの生き方がとにかく似ている。親にどう思われているかとか、兄弟にどう思われているかとか。本当に、似ていると思う。 だから今の苦痛、痛いほど判る。 どんなに今まで頑張って、そしてその結果が酷いものだった、その上での今、どれほどしんどいか。見ていて辛い、だから守らなきゃって思う。 自分としては頑張ってきた、でも認めてもらえなかった。それは自分が他人よりも劣っているからだと思っている。 仕方ない、諦めたい、でも諦めたら終わりだ。 男だから、という思いも強いだろうなと思う。 そこは私が女なので、心底わかるわけではないけれど、男には重い責任がつきまとう。しんどいだろうな。 そんな感じで思考がぐるぐるしていた昨夜、夫ちゃんは炊き込みご飯を深夜に作った。 素などを使わずに、自分で調味料を調整して作った炊き込みご飯は、とても美味しかった。 人参、しめじ、ツナ缶。 醤油ペースの味付けに、ツナ缶の旨味が出ていてとても美味しい。 このレシピは、夫ちゃんの小学生の頃の家庭科の授業での、調理実習の時に教えてもらったのだと言っていた。 自分の班のが一番美味しかったと先生に褒められたと言う。 そんな思い出、私にもあるな。何とも懐かしい気持ちになった。そして夫ちゃんの子供時代に触れられたようで、嬉しかった。 最近、夫ちゃんがご飯担当になる事が多くなってきた。 私も作るけれど、夫ちゃんは主に晩ご飯担当。 夜になると段々私が疲れてヘトヘトになるから、晩ご飯を作れなかったりするから。 一体何に疲れているんだろう?自分でも謎だ。 日々に疲れる、そんな感じだ。 小さな事でストレスを感じる。それに耐えられなくなる。疲れる。 プッシャーにも弱い。何かにせき立てられることも苦手だ。 工場の流作業のような日々は耐えられない。 昔少しだけ働いていたな、流作業。 一番遅いから一番簡単なレーンに行かされていた。まだ16歳だった。 私は昔から、自分に何ができるか迷子だった。いつ何を挑戦しても、最後まで完走できない自分。学校の課題を出すところから、苦手だった。 学校、苦手だったな。集団生活が無理すぎた。今になって自分がADHDである事が分かっているので、今は納得できる。でも当時はただ甘えてサボっているだけだと周りも自分も思っていた。 小学一年生から、やり直したい。 最悪な思い出しかない。 担任の先生にあらぬ疑いをかけられて、職員室で殴られたっけ。 あれは先生がおかしいのか、私がおかしいのか、今でもわからない。でも先生の勘違いなのは確実だった。 私が同級生の夏休みの自由課題で作ったキーホルダーを、盗んだと言われた。 私はもちろん盗んでいない。 なぜそんな疑いをかけられたのか、何となく今ならわかる。 私は学校の帰り道に、キーホルダーを拾った。 とてもキラキラしていて可愛かった。 それを持ち帰り、母親に見せた。 翌日になり、同級生のキーホルダーがない事がわかり、学校は保護者にプリントか何かを配ったのだろう。 母親が、私がキーホルダーを持っていたことを先生に言ったのか、何かわからないけれど、私が盗った事になった。 拾ったと言っても誰も信じない。 私は怖くなり、キーホルダーを草むらの茂みに投げ込んだ。 そこに投げ込んだことを言うと、先生はその茂みに入って行った。 細かいことは覚えていない。 でもとにかく、私はキーホルダーを盗んだ事になった。 そして職員室で殴られた。 本当に、行き場のない怒りとはこういう事を言うのか、と後から思った。 他にもその先生に色んなことをされたな。 教室の授業が始まる前に、突然私にランドセルを持ってこいと言う。 私は教室の後ろのロッカーからランドセルを持ってきた。 すると先生は私のランドセルを教室でクラスメイトがいる中、中身をぶち撒いた。 意味がわからなかった。それは今でもわからない。なぜあんな事をする必要があったのか。ランドセルの中身を撒いて、私に全部拾わせて、中身をランドセルに戻して、そして何もなかったかのように授業が始まった。意味がわからない。 他にもある。 突然先生が家に来た。そして言った。 「漢字ノートを失くしたって本当か?」 意味がわからなかった。私はそんな発言をしていないから。 でも一年生だった私は、こくんと頷いた。 大人に逆らわずに生きていたから、大人がそうだと決めたことは、そうなのだと思っていたから。 すると先生は家探しを始めた。 家の中の私の机周りを突然ぐちゃぐちゃにしていった。 結局漢字ノートは見つからなかった。私はいつの間に漢字ノートがなくなっているのか判らなかった。 本当に失くしていたことを今不思議に思う。いったいあれはなんだったのか。 学校嫌いの一つの要因として、この先生の存在があるけれど、基本的にはADHDでうまく振る舞えなかった。 そんな苦い思い出すら思い出してしまう、夫ちゃんの炊き込みご飯は物凄く美味しかった。 だから私は自分に誓う。 絶対夫ちゃんを守ってみせる。