「空とそらとソラ」[1]

「空とそらとソラ」[1]


空は私が飼った初めての犬ちゃんです。
女の子、真っ白な、空の雲のようだと思ってつけた空と言う名前。
空と出会ったのは、私が17歳の時。
実家から自転車で郵便局に行く途中、田んぼの真ん中で白くて小さい物体が動くのを見つけて、何だろう?と見にいくと真っ白で小さな子犬でした。
白くて小さい…私はその子に一目惚れしました。
その子は田んぼに集められていた蜜柑を食べていました。お腹空いてるのかな?と思って心配になり、そして多分この田んぼの近くにある農家さんの犬たちが親なのかな?と思ったので、当時はとても内気な私は、社交的な妹を引き連れてもう一度その場所に行き、その子に「おいで~」と言うと道路まで出てきてくれて、自分で呼んでおいてここまで来ちゃうの危ないなと思い、妹に農家さんまで行って話を聞いてきて欲しいと頼み、毎度の事で慣れちゃった姉からの命令の通り農家さんまで行って聞いてきてくれて、戻ってくるとやはり農家さんの犬の子供だったみたいで。
そして私はこれは自分で言おうと思って勇気を振り絞り、「この白い犬貰えませんか??」と聞くと、快く良いですよと言って貰えて喜んでいると、「この子もどうだい??」と、白い子より更に小さい茶色の子犬を抱きかかえてきて、二匹も飼うとなると、まだ飼って良いか聞いてない白い子だけでも飼えるのか分からなかったから(無理矢理説得するつもりで居たけど)、私は戸惑ったけれど、なんとその時我が妹が、その茶色い子犬に一目惚れしていたのです…。
なので妹が独断で、その子も欲しいですと言っちゃって、農家さんはこの二匹以外は里親さんが決まっていて、残った二匹なのでと喜ばれて、もう後戻りできないと思った私は、そのまま一匹ずつ自分たちの自転車のカゴに乗せて家に帰ったのです。
もちろん母親はびっくりして、二匹も無理だよとちょっと怒っていたけれど、そりゃそうだ、母親は動物がとても苦手なのだから。
でも私が小学四年生で亡くなったけれど、前に白い犬を実家では飼っていて、それからは居なかったけれど私としては、小さい頃から犬がいた生活だったのでずっと犬が欲しかったのです。
一目惚れした白い子は、すぐに私に懐いてくれて、もう家に帰る前に近くのお店で首輪とご飯入れる容器とご飯を買って帰ったので、とりあえずお腹すいているみたいだからとご飯をあげて、首輪をつけて、着々と飼う準備を妹と二人でしていると、母親は根負け状態で「自分たちで面倒見るなら飼っても良いよ」と言ってくれたのでした。
そして、空と名付けた白い子と、その名前を聞いて茶色いからという理由で茶色い子は陸と名付けられて、我が家の家族の一員になったのです。
まあ結局、私が一年後に、家族に言わせると家出をしたので、その後は弟がとても空を可愛がってくれて、私が実家に帰った時には完全に弟の犬ちゃんになっていましたが。
でも私が帰り、空に会うと初めは警戒されていて、でも少し経つと覚えていたかのように再び懐いてくれて、もう4歳になっていたけれど再びこの子と生活できるんだと私は嬉しかったのです。
その後、たまに数日の家出を繰り返した私ですが、散歩に行って一緒に過ごして癒されたりの日々が過ぎていきました。
私が29歳で一人暮らしを始めて、空と少し離れたけれど度々実家に帰っていたので、空には会っていました。
その頃もう空も年寄りになり元気が無くなっていき、食事も散歩も昔のようにはいかず、少しずつ弱っている感じはしていました。
ある日、お昼の間は外で過ごしていた空と陸。夕方になり寝るときは家の玄関に入れていたので、その日も玄関に行くために迎えに行くと、空の周りを大量の小蝿が飛び回っていました。なんだろう?と思いつつもそのまま玄関に入れて、その日は寝ました。
翌朝、空の様子がおかしいと母親が言って、妹が体を見てみると、肛門近くに小さなウジ虫のような虫が沢山いました。そして空は痛そうにずっと鳴いていました。
それを見た妹が、色々調べてそれがハエの幼虫である事を突き止め、エタノールの入れた入れ物を用意して、一匹ずつピンセットで取り除いていきました。
すぐに病院にも行ったのですが、状態を見た獣医さんがなんの処置もせずに安楽死させますか?と聞かれて、あり得ないと思って妹がずっと一人で虫を取り除いていました。
毎日、日に日に大きくなる虫。これを放置すると、虫が内臓内で成長して大量な数なので内臓破裂して動物が死んでしまうという検索結果を見て、妹は号泣しながら寝ずに虫を取り続けたのです。
でも流石に素人が取り除くのは無理があり、前の獣医さんとは違う動物病院に連れていき、そこでほとんどの虫を取り除いていた事に驚かれて、本来は動物病院でしなきゃいけないのに、よく頑張りましたねと言われ、そんな事はどうでもいいので処置をお願いしますと、その日から入院する事になりました。
そして翌日、空の様子を見に行こうと、早朝から私の部屋に妹が迎えにきてくれて、さて行こうかというタイミングで動物病院から電話があり、空が自力呼吸出来ていないと言われました。すぐに病院に向かいましたが、もう空は亡くなっていました。それなのに口から簡易的な手動の空気入れのようなもので、看護師がずっと空気を送り込んでいて、もう亡くなっているのに続けていたせいか、空の腹部がパンパンに膨らみ、そのまま死後硬直で硬くなっていました。推測するに、医者や看護師が出勤した時にすでに空は亡くなっているのと同じ状態で見つけられ、形だけでも蘇生したようにする為だけに、私たちが行くまでずっと無意味に空気を体に送り続けたようでした。
空は昔から動物病院が大嫌いで、迎えに行くとオシッコを漏らしながらブンブンと尻尾を振って再開を喜んでくれた子です。
最後が動物病院でひっそりと亡くなり、しかも死後に苦しい思いをさせられ、それが死後ならまだ救われるけれど、瀕死の状態であんなテキトーに空気を入れ続けるだけの行為をされていたとしたら、とても苦しかっただろうなと…。

私は、空との時間にとても後悔が残っています。
もうあんな後悔をしたくなくて、もう犬は買わないとその日に誓ったのです。


続く