おはようございます。
2017年6月の新規事業の話です。
企業が既存事業をやりながら新規事業に取り組もうとするのには理由があります。
一番の理由が、それまで本業としていた事業自体が、世の中から消えてしまうという大きな波が来てしまったときです。
富士フィルムホールディングスの話をいたします。
富士フィルムホールディングスは昔富士写真フィルムといいまして、写真のフィルムのメーカーでした。
一時は米国コダック社との壮絶な世界シェア争いに勝ち、世界の写真フィルムの大部分を押さえるに至ったのです。
しかし、この富士写真フイルムは、2,000年代に入って、社業の消滅という危機にさらされたのです。
今ではデジカメとすら言わなくなってきた(単なるカメラ)デジタルカメラブームです。
フィルムを使ったカメラが全く売れなくなってきたのです。
まさに、市場の消滅です。
富士写真フィルムも、デジカメ市場に参入しましたが、自らの本業衰退を加速するこのような動きをせざるを得なかったところに同社の苦しみが見て取れます。
写真フィルムの市場は、2000年をピークにどんどん小さくなっていきます。
年率2割3割の勢いで、市場が消滅しました。
恐ろしい数字です。
そして、2000年当時、富士写真フィルムの売上の6割、利益の6割は写真フィルムの事業によるものだったのです。
このような市場の激変の中、富士写真フィルムの古森重隆(こもりしげたか)社長は、新規事業を絶対に成功させて従業員を食わせて株主に報いなければならなくなりました。
成功する新規事業へつながるものを見つけるべく、社内のリソース(資源)を洗いざらい並べて検討したのです。
その洗い出しと検討の結果、なんと、化粧品業界に打って出ると決断したのです。
一見畑違いのフィルム事業と化粧品事業ですが、富士「写真」フイルムは、創業以来数十年以上にわたって「コラーゲン」を使ったフィルムの製作をしてきた会社だったわけです。
そして、むろん化粧品にとって重要な「コラーゲン」を限界まで小さくして肌に浸透させていくという技術はまさに世界トップだったのです。
その結果、生まれたのが、「アスタリフト」という赤い色をした化粧品です。
化粧品は製造原価がとても低いうえ、1度買ったら終わりではありません。
フィルムと同様に、ファンになってもらえた人からは、繰り返し繰り返し購入されるのです。
そして、会社の名前も、フィルム事業に特化した会社ということで「写真」を外し、富士フィルムとして再スタートを切ったというわけです。
この富士フイルムの話は、製造技術という社内のリソースを有効に事業転用に活用した例として秀逸なものだと思います。
同じように将来に語り継がれる新規事業をやってみたいと思いますが、危機的な状況にさらされるのは勘弁してほしい、そんな卑近なサラリーマンの筆者からのお話は以上です。
(平成29年6月16日 金曜日)