洋上風力総撤退

三菱商事、千葉・秋田沖の洋上風力計画から撤退表明　建設コスト増で

2025年8月27日

　三菱商事は27日、千葉県と秋田県沖の3海域で計画する洋上風力発電所事業から撤退すると発表した。中西勝也社長は「実現可能な事業計画を立てることは困難であるとの結論に至った」と述べ、建設コストの大幅増などを理由に挙げた。

　撤退するのは、秋田県の「能代市、三種町及び男鹿市沖」「由利本荘市沖」と千葉県の「銚子市沖」の3海域の事業。三菱商事や中部電力の子会社などで構成する企業連合は2021年、洋上風力を巡る国の公募制度の初回入札で3海域を「総取り」で落札した。

　3海域合わせた発電出力は約170万キロワット。出力1キロワット時当たりの売電価格は11・99～16・49円と政府が設定した上限価格29円を大幅に下回る計画を示していた点が評価された。しかし、その後の物価上昇や円安で建設コストが上昇し、実現が厳しくなった。三菱商事は25年3月期に洋上風力事業で524億円の損失を計上している。東京都内で記者会見を開いた中西社長は「入札時に見込んでいた金額より建設費用が2倍以上の水準に膨らんでおり、将来さらにコストが変動するリスクもある」と説明した。

　洋上風力は、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた「切り札」として期待されてきた。25年2月に改定された国のエネルギー基本計画では、電源構成に占める風力発電の比率を、23年度の1・1％から40年度に4～8％に引き上げる目標を掲げている。

　今回の事業撤退で、それぞれの海域では再公募する必要がありそうだが、資材価格や人件費は世界的な高騰が続いており、代わりの事業者が現れるかは不透明だ。政府はエネルギー戦略の見直しを迫られる可能性がある。

もともと無理な計画でした。撤退が正解です。三菱商事の株買おうかな。

これは罪深い・・。日本の洋上風力のみならず再生可能エネルギー全体に対して、大きなマイナスのインパクトを与えることが懸念されます。
洋上風力の三菱商事が他と比較にならない低価格で、第1ラウンドの入札を総取りしたのは皆さんご承知の通り。関係者であれば誰しも「その価格でできるのか？」といぶかしむ低価格だったわけですが、もし損が発生するとしても、三菱商事は化石燃料資源等で潤沢な利益をあげているので、全体で吸収するのだろうかと私も考えていました。
三菱商事が日本のエネルギー事業に対して本気で取り組むと、地元関係者や政策関係者も信じていたのが裏切られた形。この間、時間も関係者の信頼も失い、再エネ事業に対するためらいを強く植え付けてしまいました。

そもそも、日本と欧州では、おなじ洋上風力事業と言っても全く違うものと言っても過言ではありません。
第一に、風が違う。日本は、冬は強風が吹くものの、夏はべたなぎになります（余談ですが、先日石狩湾の洋上風力を見に行きました。船で視察したのですが、船が全く揺れず快適そのもの。要は風が吹いていないわけです。）通年で考えると欧州の6割程度しか風が吹きません。わかりやすく5割だとすると、欧州と日本とで、同じ値段で風車を建てることができたとしても、発電電力量が半分ですから、1kWh当たりの発電コストは倍になるわけです。しかもこういう強弱のある風の吹き方（加えて雷も）は、設備に負担をかけ、故障率が上昇することになります。
第二に、海底が違う。遠浅の海域面積において、日本は英国の1/8です。着床式と呼ばれる海底に柱を立てる方式ではなく、浮体式というまだ商用化がほとんどされていない技術で大量導入を目指すとなると、相当コストが上がることは自明。今回の案件には関係がないものの、今後は大きな壁になります。

このプロジェクトには、マイナーですが、中部電力さんも入っています。メインプレイヤーが電力会社だった場合、撤退という判断になっただろうか？公益事業、インフラ事業の担い手という自負があると、この撤退という判断はできなかったかもしれないと思います。それが民間企業として正しいかどうかは別として。
電力システム改革は、様々な新規参入のプレイヤーを呼び込もうとしていますが、そうした考え方にも疑問を与える出来事ですね。

以上