葉梨法務大臣の発言

「死刑のはんこを押し、昼のニュースのトップになるのはそういう時だけという地味な役職」
という発言をするとニュースになる地味な役職

葉梨康弘法相が10日、死刑執行の手続きを巡る自身の発言について、首相官邸で記者団に説明した内容は次の通り。

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 記者 松野博一官房長官とはどのような話をしたのでしょうか。

 葉梨氏 昨日の武井俊輔副外相のパーティーにおける(自身の)発言が、各紙で報道されている。この点について報道されている発言があったことは事実だ。この点について官房長官に対して「法務省の職務を軽んじるような印象を与えたとすれば、率直におわびを申し上げる」とお伝えして、長官からも「軽率な言動がないよう」ということで厳しく注意を受けたところだ。その上で私の真意ということだが、これも長官にお伝えをした。結論的に言うと、今後言動には慎重に注意をしていくとなるわけだ。その前提として、皆さん、昨日の発言もどういう発言の内容か全体を見ている方があまり多くはないだろうと思うので、長官にも説明し、昨日の発言の全体像、テープ起こししたものがあるので、読ませていただきたいと思う。発言した内容をこれから読み上げさせていただく。

 ◇葉梨氏が紙を読み上げる

 法相を務めている衆院議員の葉梨康弘です。私の宏池会(岸田派)の同志でもある武井さんの「みらいを創る会」ですか、ぜひ激励の言葉をということで喜んで参上させていただきました。

 法相になり3カ月になりますが、だいたい法相というのは、朝、死刑のはんこを押しまして、それで昼のニュースのトップになるというのはそういう時だけ、という地味な役職なんですが、今回はなぜか旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の問題に抱きつかれてしまいました。ただ抱きつかれたというよりは、一生懸命その問題解決に取り組まないといけないということで、私の顔もいくらかテレビに出るようになったということでございます。

 武井さんの話だが、先ほど来、いろいろな方から話があるが、コロナ禍になる前は、宏池会の中でもいろいろ飲み会とかやっていました。非常に明るい、お酒を飲む声もでかいが、歌う声もでかい。「日野の2トン」とかたくさん歌って、非常に明るいという印象があります。もう一つは地元に対する情熱と、国政を何とかしていかなければいけないという危機感があります。多分、外務政務官、副外相も希望してなったと思うが、法務省と外務省は似たようなところがあります。

 三つくらい申し上げたい。一つは、今回のロシアとウクライナの関係で外務省が前面に出て、いろいろな仕事をしていただいています。その下支えのような形だけれども、ウクライナの難民を受け入れているのが法務省。ロシアの戦争犯罪について国際的な連携を図るのも法務省です。11月28日、29日には法相の会合としては初めてG7(主要7カ国)の法相会合がベルリンで開かれる。一つは、ロシアのウクライナ問題への対応ということでも共通点があります。もう一つは、国の根幹をなすという意味では、非常に大事なことだと思います。外交、それから法務省は憲法を具現化する、理念を具現化する、そういう行政です。ちょっと難しくなりますが、そんなことをやっている。国の屋台骨を支えるという意味では、外務省と法務省は似たようなところがあって、それをしっかり希望されて、副外相になられたことは、やっぱり国士だなと大いに感じるわけです。

 三つ目の共通点ですが、外務省と法務省、票とお金に縁がない。副外相になっても全然お金がもうからない。法相になってもお金は集まらない、なかなか票も入らない。となってまいりますと、しっかりと良い仕事を武井さんにしてもらうためには、今日お集まりの方々が、物心両面で支えていただかないと、私も支えていただきたいというのが本音ですが、なかなか日本の国を良くすることはできない。今日お集まりの方々、本当に皆さんがお支えだ。この武井俊輔というナイスガイをしっかりと支えていただくよう心からお願いを申し上げ、私からのあいさつとさせていただきます。本日は本当にありがとうございます。

 ◇再び記者との一問一答

 葉梨氏 ということで、昨日の発言の趣旨の根幹は、法務省というのが日本の屋台骨を支える行政である、まさに国士として、この気概を持ってやっていかなければいけないということでは、(パーティー主催者の副外相の)外務省と共通点がある、そのことを強調する。ただ、その導入のところで、マスコミも昼のニュースのトップに出るということがファクトとして言うと、今までは死刑の印鑑を押した、その日の昼のニュースのトップで出るというのがファクトとして、そういうことである。地味に見られるのかわからないが、極めて大切な行政であるということを全体としては申し上げたわけだが、やはり今、私は閣僚ですから、たとえ一部を切り取られたという形であっても、その部分において何か自分たちの仕事を軽んじているような印象を与える発言は、今後は非常に慎重にしていく必要があるなと思うので、官房長官の厳しい注意を受け止めて、今後の発言には慎重を期してまいりたい。

 記者 法相の仕事を軽んじる意図はなかったということか。

 葉梨氏 全体の発言で見てほしいが、地味な仕事というのは、私が申し上げたのは昼のニュースのトップになるというのはそういう時だけという地味な役職と言っている。つまり、役職として法相が光が当たるような形でトップニュースになるのはそういう時ぐらいだということで、そういう意味では地味な役職だが、やっていることは地味ではないし、しっかりとした仕事をさせていただいている。まさに日本のために極めて重要な仕事だという思いがある。地味な仕事だとは言っていない。一部の新聞報道にあるように「法相の仕事が、死刑のハンコを押すだけ」なんて、私は一切言っていません。ただし、一部切り取られたことがあったとしても、誤った印象を与えるようなことは閣僚としては、気をつけないといけないということだと思う。

 記者 岸田文雄首相とは話したのか。

 葉梨氏 いえ。この件については首相とは話していない。長官から報告されると思う。いずれにしても長官からの厳しい注意をしっかり受け止めたい。

 記者 今後、首相と話す予定はないのか。

 葉梨氏 閣議では顔を合わせるから、この件ももしかしたら11日の閣議の後に、私から、しっかり頑張りますということを申し上げるかもわからない。

 記者 今回の発言を受けての進退はどうするのか。役職を続けるのか。

 葉梨氏 法務省の仕事は極めて重要な仕事だと発言した。しっかり言動には慎重を期しながら、しっかりとした仕事を、職責を全うしていきたいと思う。

 記者 死刑制度は賛否両論ある。パーティーの場で引き合いに出すことは適切だと思うか。

 葉梨氏 適切か適切でないかということについては、いろいろな評価があるだろうと思う。死刑制度については国会でも、記者会見でも申し上げているとおり、現状として国民の間で確かにいろんな議論があるが、法に定められたことを執行していくのが法相の責務だ。問われれば、死刑の印鑑を押すことは私自身は、法を執行する立場ではやっていかないといけないことは各所で申し上げているので。パーティーの場であろうが他の場であろうが、死刑のはんこを押すことは本来の私どもの仕事、仕事というとおかしい、それだけが仕事ではないですから、仕事の一つであることは間違いない。

 記者 官房長官からどのような理由で注意されたのか。

 葉梨氏 たとえ一部が切り取られたとしても、私どもの仕事を軽んじているような印象を与えるということはあってはならない。全体を見てもらえば、そういうことではないということは分かるにしても、閣僚である以上は一部を切り取られるということは、ままあることなのだから、しっかりとその点も配慮しながら注意をするようにということだ。

 記者 発言の撤回はしないのか。

 葉梨氏 全体の中で話すので、今後、慎重を期していきたい。

 記者 撤回はしないのか。

 葉梨氏 今のところそういう考えはない。しかし、説明をよくしないといけない。その部分だけの発言をしたわけではなくて、全体の真意をしっかりと説明をしていくということは、続けさせていただきたい。あらゆる場で。

 記者 昨日の場で発言したものは、原稿を用意していたのか。

 葉梨氏 いえ、原稿はない。

 記者 その場で葉梨氏が考えた内容か。

 葉梨氏 はい。

※この後、葉梨氏は参院法務委員会で9日の発言を撤回すると表明した。