邪馬台国と女王国を分けて考えてみる(2021/03/02)

▼突然ですが邪馬台国(邪馬臺国)関係最新版です。女王国イコール邪馬台国と考えておりました筆者ですが、他の碩学の意見に文字が違えば意味が違うという率直なものがあり改めて別ものとして考えてみました。まず女王国ですが、各国を束ねる連合国のそのまた上位概念の、いわば帝国、それもそれ自体が国とは呼べない象徴的なもの、いわば神聖ローマ帝国のような領邦連合のそのまた連合、というイメージです。

▼要するに、ここで倭国を統べる代表としてのクニであるのが、女王国となり、この国は220年ごろ、女王卑弥呼を国家元首にいただき、伊都国グループ、邪馬台国グループ、投馬国グループの三つのクニグニの集団から成る連合諸国郡だったと考えます。女王国とは、倭国の政権中枢・都(宮処)を意味するものと考えます。特定の領土を持つ国ではありませんが、所在地は邪馬台国内にあり、必要によって遷宮・遷都も可能です。カトリックの総本山、バチカン市国のようなものでしょうか。または、この倭国連合をEUにたとえてしまうと、邪馬台国はベネルスク3国で、女王国はEU首都のブリュッセル本部の界隈という感じです。

▼まずは女王国です。魏志倭人伝を細かく読んでみますと、「世有王 皆統属女王国~」と述べられているように伊都国や投馬国は政権中枢としての女王国に統嘱していますが、邪馬台国に統嘱している訳ではありません。また、下記の記述例では、女王国は地理的な都を指すので邪馬台国と重なる場合もあり、ややこしいことになっています。バチカン市国がイタリアの首都ローマという同じ場所にあるのと同じです。さらに、女王国は遷宮可能ですから、代表者である祈祷師かつ巫女であるところの卑弥呼(個人の名前ではなくて王位自体の名前かもしれません)を戴きながら、女王国の威光が及ぶ地域に自由に移動、避難することが可能なのです。筆者は、壱与の代になったときには、それまで女王国であった大分県日田市(日田神社)の盆地から、山向こうの宇佐市(宇佐八幡宮)に遷宮した可能性が高いと考えています。また、伊都国については、卑弥呼の前の時代での王都があった軍事大国と推定され、かつてここの軍事力に守られていた王は、平和な時代になり稲作食糧生産地として着目された筑後川水域へ移動し、女王国と言われるようになったのではないか、王国が移動して女王国になったのではないかと考えるのです。

▼次に伊都国グループです。今は福岡県糸島市と言われる一帯ですが、伊都という極めて古い名前がずっと残っていて、古墳もたくさんある地方です。漢に朝貢していた大国である委奴国を1〜2世紀に武力制圧したのが伽耶系統の伊都国であり、周辺国や玄界灘の島々も傘下に収め、封建体制を敷き、検察官大率直属の武官ヒナモリを各国に置いて支配したと考えられます。強烈な軍事大国です。勝手ですが、古代ギリシャのスパルタのような存在に似たものを感じます。魏志倭人伝にありますところの伊都国戸数千余戸はあくまでも納税台帳を元にした生産者戸数であり、非納税者である政治・軍事の要員を別に数万人抱える軍事大国だったのではないかと考えています。

▼次に邪馬台国グループです。有明海沿岸、山麓の20ヵ国ほどの中小のクニグニから成る連邦的体制。もともと広域で独自に営んでいたクニグニですが、南進する伊都国の軍事・政治的圧力に対抗するため同盟を結び、女王卑弥呼を擁立して邪馬台国を名乗ります。最終的には、女王卑弥呼を倭国連合の象徴的な祭王とし、伊都国王を政王とすることで折り合いを付けたのではないでしょうか。前者は権威、後者は権力であり後世のヒメヒコ制、天皇と将軍の二元体制のプロトタイプとなります。ただし後世と異なり、祭祀と政治は不可分であり、馬も無い時代であれば両者は地理的にもそれなりに近くに居る必要があると思われます。なので、邪馬台国が畿内にある、という畿内説(通説)には筆者は与しません。

▼最後に投馬国グループです。伊都国や邪馬台国とは地理的に離れていると思われるので、後から倭国連合に参加したと考えます。出雲国に比定する方が多く、その可能性もありますが、私は後の神武(崇神)東征の中核勢力と捉え、瀬戸内に勢力圏を築くための地勢的アドバンテージを持つ豊前豊後付近に比定します。つまり、宇佐八幡宮を有する宇佐市や豊前市の勢力であり、筑後川氾濫により邪馬台国グループの力が衰えたところ、宗女壱与を戴き、宇佐にお迎えしたのではないでしょうか。

▼長い考察になりましたが、一つの考え方としてご覧いただけましたら幸いです。

(2020/04/05)筆者ライフワークの邪馬台国比定地について「甘木説(福岡県甘木市)」に変更します

おはようございます。 歴史好きですが、日本史においては戦国時代よりも明治維新よりも、そのはるか昔の古代史(奈良時代まで)が特に好きな筆者からのライフワーク記事で…