民法第21問

2022年11月4日(金)

問題解説

問題

A、B及びCは、甲建物を共有しているところ、同人らの間には甲建物の使用等に関して特段の合意はない。なお、甲建物の持分は均等であるとする。
以上の場合において、以下の1及び2に答えなさい。なお、各問は独立しているもの とする。
1 CがA及びBに無断で甲建物を独占して使用しているため、A及びBはCに対して甲建物の明渡しを請求しようと考えている。この請求は認められるか。
2 1の訴えが認められなかったため、Aは、Cに対して、自己の持分割合に応じて、甲建物の賃料相当額を請求しようと考えている。この請求は認められるか。

解答

第1 問1について
1 A及びBのCに対する請求は、甲建物の共有持分権(249条1項) に基づく返還請求としての甲建物明渡請求である。
一方で、CもA及びBとともに甲建物を等分で共有しており、甲建物につき共有持分権を有している。そこで、少数持分権者が共有目的物を単独で占有している場合に、多数持分権者が目的物の返還請求をすることができるかが問題となる。
2 確かに、別段の合意がない限り、共有者は、単独で当該共有物を占有する権原を有するものではない。しかし、各共有者は、その持分権に基づいて共有物全体を占有する権利を有する(249条1項)。
したがって、多数持分権者といえども、当然に当該共有物の明渡請求をすることができるわけではない。
ただし、多数持分権者が、共有物の明渡しを求める理由を主張立証した場合には、この限りでない。
3 本問でも、A及びBが、多数持分権者であったとしても、当然には少持分権者に対し、甲建物の明渡しを請求できない。 もっとも、A及びBは「持分の価格」の「過半数」を有するから、議を行い、Cの利用を認めない旨を決定するなど、「共有物の管理に関する事項」を定め、明渡しを求める理由を主張立証すればよい(252条1項前段)。この決定には、現に甲建物を占有するCも拘束される(同項後段)。
4 以上から、A及びBのCに対する請求は当然には認められないが、上記決定を行うなど、共有物の明渡しを求める理由を主張立証すれば、A及びBのCに対する上記請求は認められる。
第2 問2について
共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う(249条2項)。
本問では、CはA及びBに無断で甲建物を占有しているため、別段の合意はない。 したがって、Aは自己の持分割合に応じて、占有部分に係る使用の対価として賃料相当額を請求することができる。
以上

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