ライスワークも大切だ

ライスワークとライフワーク

ライスワークとは、筆者によれば、その名の通り、当面喰っていくために必要としている仕事という意味です。生涯を通じて取り組むべき、理念と高い精神性に裏打ちされた概念である「ライフワーク」という概念の反対にあるものです。ライフワーク、という言葉は、筆者の知る限りでは、漫画の神様手塚治虫が生涯を通じて一番こだわって書き続けた火の鳥シリーズの書籍の帯に、「手塚治虫のライフワーク」というキャッチコピーが載っていたのをなんとなく覚えていたのが始まりです。火の鳥宇宙編を読んだ小さい頃のわたしは、大いに感動してこんな話を書く人間がいるのかと衝撃を受けたものです。その後、宮崎駿という人が動く漫画、いわゆるアニメーションというものを飛躍的に開花させていろいろな作品を生み出すことになり、こちらもものすごい衝撃を受けたのですが、やはり、筆者の人生において、最も驚き感動した読書視聴体験だったと言えます。そういうわけで、自分の中ではライフワークという言葉が軸になっているわけですけれども、その、夢だけじゃ喰っていけない、さらに喰っていけないどころか、それだけを追っていくと、どうしても、身の回りが貧相になり、考えも鈍して結局国の補助金とかヒモとなって経済的にも精神的にも誰か、もしくは宗教とか国家とかそういうものに依存してしまう残念な人間になってしまいます。そういうのは生んでくれた両親に申し訳もたちませんし、さらには、将来この国なり世界を繋いでいくためには子孫を残して子どもたちに繋いでいかないといけません。自分だけの人生ではないわけです。そういうわけで、自分自身のライフワークを大切にしながら、というかライフワークを大切にするために、きっちりしっかりライスワークをこなしていなかければならないというところです。ライスワークと侮ることなかれ。すべての仕事はお客のニーズや必要を満たすために発生します。お客が自分ではできない、もしくは時間が取れないのでやらない、その必要やニーズを満たして適正な対価をいただく。これが仕事の基本です。重要なのは、①顧客の必要と、②対価です。この対価という、いわばサービスの値付けが徹底的に重要なのです。自社や自分の報酬を担保しつつ、適正なサービスを提供しつづけるだけの自社組織やブランド維持のために適正な売価を設定し、きちんと顧客に説明しなければなりません。そうすると、ライスワークの本質は変容し、これこそがライフワークじゃないのかという分野も見えてくるので不思議です。筆者はそういうわけで、特にライフワークがないまま今の歳になりましたが、それでも、22歳の春に社会人として世に身を投げ出してから丸27年、日々の糧を得ながら、その場その場で対応するため、労働者として身を売って顧客のニーズを満足させ、報酬を会社組織を通じて頂戴するという原理原則を貫いてきたという密かな自信はあります。ですので、ライスワークと侮るなかれ、ライスワークなきライフワークは寝言である、とも言い換えることができます。そして、そうすれば、ライフワークなきライスワークに堕ちてしまい、そして身と心を文字通り削り尽くしてしまうような不幸な先の人生を回避することができると思います。ライフワークもライスワークも、程よく中庸で好き嫌いなく楽しめる自立した職業人こそ、長く無事是名馬で過ごすことができる秘訣だと言えそうです。衣食足りて礼節を知る。知らんけど。これ、誰に向かって書いているかといいますと、確かに複数の人を頭に思い浮かべて一気に書きましたが、一番書きたい相手は、他ならぬ自分自身だったりしますw
おわり