商法第14問

2022年9月19日(月)

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問題

A交通株式会社(以下「A社」という。)は、非公開の取締役会設置会社である。A社は、甲県と乙県にバス路線を有しているが、乙県を走る路線については旅客数が激減しているため、取締役会で、この路線をB株式会社に譲渡するとの経営政策を決定した。ところが、筆頭株主であるCがこの経営政策に猛反対している。A社の取締役会は、この経営政策を円滑に実現するために以下の3つの方法を検討した。A社は、それぞれの方法を採ることができるか、できるとした場合、どのような会社法上の手続を履践すべきかを検討せよ。なお、1と2の方法では、Cは株式の譲渡に応じているものとする。
1 A社がCの持ち株を全て買い取る。
2 A社の子会社であるD株式会社にCの持ち株を全て買い取らせる。
3 A社の保有する自己株式をA社と友好的な関係にあるE株式会社に譲渡する。

解答

第1 1について
1 A社が筆頭株主Cの持ち株を全て買い取る方法は、「特定の株主」からの自己株式の取得に当たるところ、A社は以下の手続を履践することにより、この方法を採ることができる。
2 自己株式の取得は、会社法(以下,法令名省略。)155条以下の手続により行うこととなる。
具体的には、まず、A社は、「特定の株主」であるCから株式を取得するに際して、その旨を株主総会特別決議により決定しなければならない (309条2項2号かっこ書、156条1項、160条1項)。特別決議が必要とされるのは、特定の株主からだけ自己株式を取得することは、他の株主との関係で不平等が生じるおそれがあるため、その当否を株主総会によって判断させる必要があるからである。
加えて、A社は、C以外の株主に対して、上記の「特定の株主」に自己をも加えたものを株主総会の議案にすることを請求することができる旨の通知をしなければならない(160条2項、3項)。これは、他の株主にも株式譲渡の機会を与えることによって、他の株主との関係で不平等が生じないようにするためである。
3 なお、A社は、上記の手続を残した上で株式の対価として金銭等を交付する場合、当該株式の取得の効力を生ずる日における分配可能額を超えることができない(461条1項2号3号)。これは、資本維持の原則上の問題を回避するためである。
第2 2について
子会社は、その親会社である株式会社の株式を取得してはならない(135条1項)。 これは、子会社による取得は、自己株式と同様に、会社債権者や株主平等原則との関係で不平等を生じ得るという弊害が生じ得るものの、別法人であることもあり、合理的な財部駅判や手続規制を設けることが困難であることから禁止されたものである。
したがって、A社は、子会社であるD株式会社にCの株式を買い取らせることはできず、この方法を採ることはできない。
2 なお、合併の場合など、権利の実行に当たり目的を達成するため必要のある場合には、親会社株式を取得することが例外的に許容されるが(135条2項各号、施行規則23条13号)、本問はこの場合に当たらず、例外として許容されない。
第3 3について
A社が、自ら保有する自己株式をE株式会社に譲渡することは、199条以下の「自己株式の処分」に当たる。そのため、A社は以下の手続をすることによりこの方法を採ることができる。
2(1) 自己株式の処分は、公開・非公開会社により履践すべき手続が異なる。
A社は非公開会社(2条5号参照)であるため、募集事項(199条1項)の決定を株主総会特別決議により行うことが必要である(199条2項,309条2項5号)。これは、非公開会社において、既存株主の特別多数の承認を要求することにより、既存株主の利益との調整を図るためである。
(2) なお、株主としては、事前に差止請求をすることによって(210条各号)、事後に無効の訴えを提起することによって(828条1項 3号)、支配の不公正の危険を是正することができる。
以上

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