落合監督の凄み

来期から、また新しく指揮を執る日本プロ野球の監督を見るに、かつて中日を率いた落合博満監督の凄みが際立ちます。

落合監督は、選手のプロ意識にゆだね、怒鳴ったり暴力を振るったりするという通常の怖さではなく、選手を試合で使うのか使わないか、その一点のみに凝縮された凄みと怖さがありました。

選手にとって、体が痛いとか調子が悪いとか言えば、次の日には二軍のベンチが待っているだけの、とても怖い存在です。

選手としても監督としても超一流の極みに達したのは、選手を限界まで見極め、そして選手の自主性に完全にゆだね、責任を選手に取らせた一点に尽きます。

選手を起用するのはベンチの責任。

使ったのはベンチだということを徹底していて、選手個々人の成績や数字のことはとやかく言わず、レギュラーには数字よりもいかに試合に出るかが重要だということを
ことあるごとに言っていました。

なので中日を率いた唯一8年間で全て規定打席を達成した荒木のことを1番褒めています。

ここまで徹底すると、いわゆるファンサービスや興行といった要素は失われるため、いくら成績が優秀であっても、落合の野球がつまらない、などとして優勝したのに解任されるという不遇を味わいます。

そんなの、優勝出来てない事の方がはるかにつまらないでしょう!と思うのですが、それだけ、フロントやファンや選手におもねることなく、自らの哲学を徹底し続けたその姿勢に、球団フロントやファンのほうが耐えられなくなったからなのかもしれません。

出したベンチの全責任というのは、なんでもないフライをこともあろうに日本シリーズで落球してしまった英智選手について「あいつが取れないなら誰も取れないさ」とさらりとコメントしているのが凄いです。

実績ある和田選手には、直接「(チーム内で)競争させない」という言葉をかけ、選手側の優越感を封じました。

言葉の意味が重いし、怖いという意味がよくわかるエピソードです。

同じく和田選手には「自分の数字を上げることだけを考えろ。チームのことなんて考えなくていい。勝たせるのはこっちの仕事だ」と言います。

落合監督は監督就任時、コーチ達に絶対選手には手を上げるなと約束させたとの話も聞きます。選手達には完全に自己責任、プロ魂を植え付けて反面、理不尽な事は一切しないという、凄まじい監督、統括責任者の姿と思います。

監督としての唯一の目標である、勝利に向けて明確な線を引く姿勢は全く尊敬の一言です。

有名になりたいとか、好かれたいとか、そういう個人の濁りの姿勢を突き崩す、選手に役割を明確に伝え、レベルアップを図るところが素晴らしく、筆者は自分の組織運営に大いに参考に致します。

以上