最高裁判所裁判官の国民審査における在外投票の制限違憲判決

在外投票の制限は「違憲」 最高裁判決 国会は法改正迫られる
2022年5月25日 15:06 毎日新聞 毎日新聞社

 在外邦人が最高裁裁判官の国民審査に投票できないのは憲法に反するとして、海外在住の男性ら5人が国に損害賠償などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は25日、在外邦人の投票を制限している国民審査法は公務員の選定・罷免権を保障した憲法15条に違反するとの初判断を示した。1、2審に続く違憲判決で、国会は法改正を迫られることになる。最高裁が個別の法令を違憲と判断するのは史上11例目。

 国民審査は衆院選に合わせて実施され、前回審査以降に就任した裁判官が対象となる。有権者は辞めさせたい裁判官の名前の上に「×」を記入して投票し、×印が有効票の半数を超えると罷免される。過去全25回の中で罷免された裁判官は一人もいない。

 原告側は上告審で「国民審査は選挙と並んで、国民主権と三権分立を実現する重要な権利。憲法はこれを奪うことを許していない」と主張。これに対し、国側は「国会に信任された内閣が裁判官を任命・指名しており、(国民審査は)議会制民主主義において不可欠の制度とは言えない。告示から投票までに各国に投票用紙を印刷して送っても間に合わず、憲法には違反しない」と反論していた。

 1審・東京地裁(19年5月)と2審・東京高裁(20年6月)は、「国民審査は司法に国民の意思を反映させる重要な権利なのに、やむを得ない事情もなく制限している」などとして違憲と判断した。また、1審は国の立法不作為を認めて2万5000円の賠償を命じたが、2審は賠償請求を棄却していた。

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