自衛権の範囲

先週金曜日の予算委員会で、自衛権行使における「必要最小限度」について緒方林太郎衆議院議員から質問がありました。憲法解釈や憲法改正の議論と深く絡んでいます。

質問は、日本には独自ルールとしての「必要最小限度」が掛かっている、アメリカには掛からない。では、日本有事において、日本が個別的自衛権を行使し、アメリカが日米安全保障条約第5条に基づいて集団的自衛権を行使する時、日本にだけ独自ルールが掛かるので奇妙な事にならないか、というものでした。

岸田総理の答弁は「普段から日米できちんと連携している」でしたが、そんな事は当然に分かっています。問うていたのは、あくまでも概念整理です。噛み合わなかったので、以下の質問主意書が出されています。

かつて、個別的自衛権の行使についてはこういう答弁でした。「(他国に認められている個別的自衛権の行使の態様よりも)ずっと狭い範囲」です。安保法制を経ても、この解釈に変更が加えられたという明確な意思決定はなされていないと思います。

こういう所が今、どうなっているかを押さえながら議論しないと、憲法9条について何を議論しても上滑りするだけです。

【個別的自衛権の行使に関する質問主意書】
昭和五十六年六月三日の衆議院法務委員会において、個別的自衛権について、角田禮次郎内閣法制局長官(当時)が次のような答弁をしている。

○角田(禮)政府委員 (略)いわゆる個別的自衛権、こういうものをわが国が国際法上も持っている、それから憲法の上でも持っているということは、御承認願えると思います。
 ところが、個別的自衛権についても、その行使の態様については、わが国におきましては、たとえば海外派兵はできないとか、それからその行使に当たっても必要最小限度というように、一般的に世界で認められているような、ほかの国が認めているような個別的自衛権の行使の態様よりもずっと狭い範囲に限られておるわけです。そういう意味では、個別的自衛権は持っているけれども、しかし、実際にそれを行使するに当たっては、非常に幅が狭いということを御了解願えると思います。(以下略)

政府は、個別的自衛権についてこの答弁で述べられた立場を維持しているのか。

結局、外相長くやっていた岸田総理ですから、なおさら、ずっと狭い範囲といいながら、事実上アメリカといっしょ、という解釈なのだと思いますが、そんな、運用に解釈を合わせてます、では701年大宝律令以来の律令国家の名が泣くので、しっかりして欲しいなと思います。

以上