民法第2問

民法 第2問 2022年6月21日(火曜日)

第1 甲土地の引き渡し及び所有権意見登記手続請求

1 Xは、Yに対し本件売買契約の効果がYに帰属するとして、甲土地の引渡し及び所有権移転の登記請求をすることが考えられる。

2⑴ 本件におけるYの定款では、固定資産の取得または処分については理事会の承認を要する旨が定められているところ、Yの代表理事Aはこれに反して甲土地を売却している。そのため、無権代理行為としてYには効果が帰属しないのが原則である(民法113条1項類推適用)。

 ⑵ もっとも、XがYの定款の存在について善意の場合には、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律77条5項が適用される。同項が適用される場合、代表者の行為の効果が法人に帰属する。この点、法人の代表者には包括的代表権が認められ、第三者の信頼及び取引安定の要請から、過失の有無は問わないと解する。

 ⑶ 本問では、Xは本件売買契約以前にYとの間で乙土地の売買を行ったことがあり、上記定款の規定については悪意である。

   よって、法77条5項の適用はない。

   しかしながら、本件ではAが乙土地の売買の際に作成した承認決議書と同じ書式を用いて偽造した承認決議書を呈示しており、理事会の承認があると信じており、必要な内部手続きがなされたと信じたXの信頼を保護する必要がある。

   そこで、相手方Aにおいて代表理事等の代表者が理事会の決議等を得て適法に法人を代表する権限を有するものと信じ、かつこのように信じるにつき正当な理由がある場合には、民法110条を類推適用し取引を認めるべきである。

   本件では、XはAが乙土地の売買の際にかつて作成した承認決議書と同じ書式を用いた承認決議書を偽造しており、理事会の正式な承認決議が得られたと信じたXに落ち度はなく、またXは取引における通常の注意義務を尽くしていることから、正当な理由が認められる。

   よって、民法110条の類推適用により、本件売買契約の効果は法人Yに帰属する。

3 以上より、Xの請求は認められる。

第2 損害賠償請求

1 Xは、Aの上記行為によって転売価格との差額である200万円の損害賠償請求をなすことが考えられる(法78条)。

2⑴ まず、Aの上記行為は故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害したものとして、民法709条の要件を満たす。この点、XはAに甲土地をBに1,200万円で転売予定であることから、AとYに予見可能な転売利益200万円が損害となると解する(民法416条類推適用)。

 ⑵ では、Aがその職務を行うについて(法78条)、Xに損害を与えたといえるか。Aは定款で定められた権限外の行為をしているため、職務を行うについての要件を満たすか問題となる。

   この点、相手方の信頼保護の観点から、職務を行うにつきとは行為の外形から判断して職務の範囲内の行為に属すると認められる場合を含むと解する。

   もっとも、取引における不法行為において相手方が職務の範囲外の行為であることにつき悪意又は重過失である場合、保護すべき信頼に欠けるため、認められないと解する。

   本問については、社団の資金を調達するための不動産の売却は、外形的にみて代表理事の職務に属する行為であると認められる。また、XにAの行為が職務範囲外につき、悪意又は重過失が認められないことから、職務に属する行為であるといえる。

3 以上より、法78条の要件を満たし、Xの請求は認められる。

第3 履行請求と損害賠償請求の関係

1 XはYに対し、民法110上類推適用による履行請求及び法78条に基づく損害賠償請求のどちらもなすことが可能であるところ、相手方の保護により資する取引が有効であることを前提とする履行請求を優先すべきと解する。

2 よって、本件では民法110条類推適用による甲土地の引渡し及び所有権移転登記請求を優先し、予備的に法78条に基づく損害賠償請求を認めるべきである。

以上

1,646文字(用紙スペースは22字×22行×4枚=1,936文字)

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