民法第19問

2022年10月21日(金)

問題解説

問題

Aは、甲自動車(A名義の登録済み)、乙自動車及び丙自動車(いずれも未登録)の3台の自動車を購入した(以下、これら3台の自動車を総称して「本件自動車」という。)。
Aは、自宅に本件自動車の駐車が可能なガレージを設置する間、自動車の販売を業として営むBにその保管を依頼し、これらを引き渡した。
ところが、Bは、急きょ事業資金が必要となったことから、甲自動車について、名義変更に必要な書類を偽造するなどして、自己名義に登録を変更した上で、甲自動車を自己所有と称してCに売却し、引き渡した。
また、Bは、乙自動車が未登録であることに気がつき、これを自己所有であると称してDに売却した上で、Dが乙自動車の駐車に必要な駐車場を見つけるまでの間、これを自ら保管しておくことにした。
さらに、Bは、丙自動車についても売却することを決意したが、事業が上手くいかな くなり、丙自動車を保管しておくスペースがなくなってしまったことから、Aの承諾を得た上で、いったんその保管を友人のEに依頼し、引き渡した上で、改めてこれをFに売却した。その際、Bは、F承諾のもと、Eに対して以後Fのために丙自動車を保管するよう指示した。
本件自動車の所有権を巡る法律関係について論ぜよ。なお、商法の適用については考慮する必要がない。

解答

第1 甲自動車の所有権を巡る法律関係について
1 自動車はAの所有に属し、かつCは処分権限を有しないBからこれを譲り受けている以上、Cはその所有権を取得できないのが原則である。
2 これに対して、自動車を購入したCに関時取得(192条)が成立すれば、Cがその所有権を取得する。
しかし、時取得制度は、「動産」の占有という公示方法の不完全さを補完するための制度であるから、登録制度という公示方法が完備されているのならば、これを認める必要がない。
したがって、登録済自動車は「動産」には当たらないものと解する。
3 よって、Cによる即時取得は認められず、甲自動車の所有権はAに帰属する。
第2 乙自動車の所有権を巡る法律関係について
1 乙自動車の所有権もAに帰属し、かつDは処分権限なきBからこれを譲り受けている以上、Dに所有権は帰属しないのが原則である。
2 しかし、小問(1)と同様Dに即時取得が成立する可能性がある。まず、乙自動車は未登録であるから、「動産」に該当することは疑いない。
そうだとしても、Dは譲渡を受けた後、引き続き乙自動車をBに保管させていることから、占有改定(183条)がある。では、第三者が占有改定による引渡しを受けた場合、「占有を始めた」ものとして即時取得が成立し得るか。即時取得制度は、占有という動産に関する権利の外形を信頼し、所有者の支配領域を離れて流通するに至った動産に対して、支配を確立した者を特に保護するものである。
ここで、占有改定によって引渡しが行われた場合には、所有者の支配領域を離れて流通しているとはいえないし、実質的にみても何の帰責性もない所有者にあまりに酷である。また、法律関係の早期確定の要請にも反する。 したがって、占有改定は「占有を始めた」に含まれないものと解すべきである。
3 以上から、Dによる即時取得は認められず、乙自動車の所有権はAに帰属する。
第3 丙自動車の所有権を巡る法律関係について
この点についても、丙自動車及びこ自動車と同様、Fに即時取得が成立するか否かを検討する。
2 Bは、Fに対して、丙自動車をする際、F承諾のもと、Eに対して以後Fのために西自動車を保管するよう指示しており、指図による占有移転(184条)による引渡しがなされている。
では、第三者が指図による占有移転を受けた場合、「占有を始めた」ものとして即時取得が成立し得るか。
上記のように、即時取得が認められるのは、所有者の支配領域を離れて物が流通している場合である。
そこで、指図による占有移転の結果、およそ所有者の占有(間接占有 を含む。)が失われる場合には、「占有を始めた」ものとして即時取得を肯定し、一方で所有者の占有が失われない場合には、即時取得を否定すべきであると考える。
3 本問では、自動車について、Eが直接占有を有しており、AがB及びEを通じて間接占有を有していた。そして、BのFへの意識(指図による占有移転)によってBが間接占有を失うことになり、それに依拠したAの占有が完全に喪失されているとみることができる。 したがって、Fは、「占有を始めた」といえる。 また、「平織」「公然」に反するような事実は認められない(186条1項参照)。
以上から、Fが善意無過失である場合には同時取得が成立し、丙自動車の所有権はFに帰属する。
以上

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