亡国予算

【討論原稿】
有志の会の緒方林太郎です。
1975年、当時の大平正芳大蔵大臣は初の赤字国債発行に際し「万死に値する」と口にしました。安易に借金に頼る時、雪だるま式に膨らみ、ツケは将来の世代が払うとの「罪の意識」を持ったのだと思います。私は決して赤字国債をすべて否定するものではありませんが、本委員会での議論を聞く限り、本補正予算案の背景にはあるべき科学が存在しません。あなたは大平正芳総理の志から学んでいない。学んだのは、田園都市構想に流行の「デジタル」をくっ付けた「デジタル田園都市構想」という正体不明の概念を生み出した事だけです。
そして、赤字国債が膨らむ事への懸念を表明する議員が減りました。これは民主党政権末期、毎年、特例公債法を立てる事を止めた事が影響しています。かつて、この仕組みについて「赤字国債を発行して後世にツケを回す事への贖罪意識を持つようにするために、この法律を通す苦労をする事が必要なのだ。」と言われていたそうです。蓋し至言です。今や誰もそのような意識を持たなくなりました。総理大臣が補正予算について「額ありき」と平気で口をするようになったのはその証左です。私は当時、与党議員として特例公債法の複数年化の法律に嫌々ながら賛成しました。今、自分自身、あの時の賛成を後悔しています。
補正予算編成時、与党幹部は「責任を取るのは自分達だ」と言って、予算額の膨張を懸念する官僚を抑えたと報じられました。しかし、この予備費と基金で水膨れした予算が本当に執行される時、岸田総理、あなたはもう総理の座に居ない可能性が高い。更に言えば、23兆円もの国債増発の責任を取れる人など居ません。あなた方が語る「責任」とは、ただの選挙目当てではないですか。責任を本当に取らされるのは、今まだ生まれていない世代です。
今、国会で「改革」を訴える政党が少なくなりました。円安誘導により日本を安売りしながらポピュリズムに堕したアベノミクスから続く政策体系が崩壊したのは、誰が見ても明らかです。しかし、対する野党も実は同じレールの上に乗っているのではないか。政治とは選択のアートであり、辛い選択をも国民にしっかりとお願いしていく気概を持たなくてはなりません。しかし、この委員会室でその気概を感じる事は稀です。今や国会はポピュリズムの館になったかのようです。
私は今の弛緩した日本経済と危機意識のない政治の顛末を想像して、夜、震えが来る事があります。しかし、我々は国権の最高機関の一員として後ろを向く事は許されません。亡国の予算を乗り越え、この国を再興させるとの強い決意を述べ、私の討論といたします。
以上