民事訴訟法第27問

2022年12月17日(土)

問題解説

問題

弁論準備手続について、口頭弁論に適用される諸原則を踏まえつつ、手続の特徴及びその終結の効果を論ぜよ。
(旧司法試験 平成20年度 第1問)

解答

第1 弁論準備手統
弁論準備手続とは、口頭弁論期日外の期日において、受訴裁判所又は受命裁判官が主宰して、当事者双方が立ち会って行われる争点整理手続(168条以下)をいう。
その趣旨は、訴訟において当事者間で真に争点となる部分を明確化することで、審理の充実と促進の要請を両立させる点にある。そして、弁論準備手続自体も、充実と促進が図られている。
第2 口頭弁論に適用される諸原則
1 口頭弁論とは、期日において、当事者双方が、法廷で裁判官の面前で主張及び各種の申立てをする訴訟手続をいう(87条)。口頭弁論においては、口頭主義、公開主義、直接主義、双方審尋主義が適用される。
2 口頭主義とは、口頭弁論での手続を口頭で行うという原則である(87条1項本文)。
その趣旨は、口頭で行うことにより、新鮮な印象をもって裁判官が判断を下すことができるようにすることにある。
もっとも、記憶の保存という観点からは口頭主義のみによることは困難であるため書面主義による補完がなされている(160条、161条、140条)。公開主義とは、口頭弁論手続を公開の法廷で行うという原則である(憲法82条1項)。
その趣旨は公平な裁判が担保されることにより、国民の裁判に対する信頼を確保することにある。
4 直接主義とは、判決をなす裁判官が直接当事者の尋問や証拠調べを行うという原則をいう(249条1項)。
その趣旨は、口頭弁論で得られた新鮮な印象をもって裁判官が審理判断を下すことが可能とすることにある。
5 双方審尋主義とは、二当事者対立構造の下、当事者双方が平等に主張を述べ、尋問する機会を与えるという原則をいう。
その趣旨は、当事者双方に平等に訴訟手続を行う機会を与え、もって適正に紛争を解決することにある。
第3 弁論準備手続の特徴
1 弁論準備手続においても口頭主義は採られている(169条1項)。争点整理手続である弁論準備手続が口頭でなされないと争点整理の充実が図れないからである。
2 しかし、 弁論準備手続においては、公開主義は採られておらず、原則として非公開とされている(169条2項)。
紛争の背景的事情を明らかにしなければならない場合もあり、非公開 の方が充実した争点整理をなし得るからである。
もっとも、当事者が申し出た者については上記趣旨が妥当しない。そこで、この場合には、手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると認める場合を除き。傍聴を許さなければならないとされている(169条2 項ただし書)。
3 また、 直接主義も緩和されておりm受命裁判官に弁論準備手続を行わせることも認められている(171条1項)。争点整理の促進の観点からである。
4 双方審尋主義については、通常の口頭弁論と同様に要求されるのが原則である(169条1項。170条5項参照)。もっとも、特に当事者が在任していなくても審尋は可能である以上、争点整理の促進の観点 から一方当事者が電話等で参加することも許されている(170条3 項)。
第4 終結の効果
1 まず、弁論準備手続終結後の口頭弁論期日においては、弁論準備手続後の結果の陳述がなされなければならないとされている(173条)。
これは、弁論準備手続が口頭弁論とは別個の手続であるため、口頭弁論における公開主義・直接主義の要請を満たす必要があるからである。
2 次に、弁論準備手続終結後であっても、当事者が自由に攻撃防御方法を提出できるとすると、争点整理を行った意味がない。そこで、終結後の攻撃防御方法の提出に際しては説明義務が課されている(174条、167条)。この説明義務を懈怠した場合には、適時提出主義の下(156条)時機に後れた攻撃防御方法として却下される可能性が高まる(157条1項)。
上記のように、弁論準備手続において、口頭弁論の諸原則が変容しているのは、争点整理の充実と促進を図るためであるから、このような争点整理の意義を失わせるような当事者の訴訟活動を安易に認めるべきではないのである。
以上

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