(2017/11/07)北朝鮮から我が国上空にミサイルが飛来して通り過ぎたときに取れる措置について

おはようございます。

2017年11月のビルメン王提供の国際政治に関するブログ配信観測記事です。

アメリカのトランプ大統領が日本を含むアジア各国歴訪の旅を始めまして、早速日本にやってきて松山選手を交えてゴルフをしたり首脳会談をしたりと忙しい訪問日程をこなしました。

その中で、北朝鮮のミサイル発射で日本が迎撃措置、撃ち落とすといった措置を講じなかったことに、不満の意を述べたらしいのですが、ではいったいどういう法的根拠や準備の中で、こうした迎撃措置が可能になるのか、識者による議論が行われておりましたので、少しまとめてみました。

こうした場合分けにおいて、最も読者にわかりやすいのは3つに大別するという方法ですので、これに習って今回も3つに分けて述べたいとおもます。

1 防衛出動

映画「シン・ゴジラ」でも有名になりました防衛出動ですが、自衛隊法第76条および第88条に規定されています。

日本に対する外部からの武力攻撃が発生した事態または武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態、もしくは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態に際し、日本を防衛するため必要があると認める場合に、内閣総理大臣の命令により、自衛隊の一部または全部が出動すること。

これは、国家であれば当然に認められる個別的自衛権行使の世界になります。

日本に落ちてくる可能性があるミサイルだと認定できた場合、それに対する迎撃は、個別的自衛権の世界として当然となります。

2 存立危機事態

続いて日本政府として取りうる方策は、集団的自衛権の要件である、存立危機事態と認定することです。

現に、日本政府も、「存立危機事態に当てはまるならば迎撃する」という言い方をしていますが、これは集団的自衛権行使の場合にあたる場合を想定しておりまして、あくまでも「日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」と認定されなければなりません。

安倍内閣が2014年7月に閣議決定した「武力行使の新3要件」の一要素で、ほかに「必要最小限度の実力行使」「ほかに適当な手段がない」がある。15年9月に成立した安全保障関連法に規定されています。

3 破壊措置命令

最後の手段として、防衛出動が発令されていない時点での、破壊措置命令が考えられます。

これは自衛隊法第82条第3項に規定がありますが、あくまで自衛権の行使ではなく、日本国内における警察権の行使という位置付けです。

変なものが飛んで来たので破壊して処分する、これは警察権の行使である、凶器を叩き落とすといったイメージです。

どれにも当たらない

しかしながら、今回の北朝鮮から飛来した弾道ミサイルについては、「我が国に飛来するおそれ」が無いものであるのが明らかなのです。

それゆえに、上記にあげた3つの対応策のどれを用いても、そうした事態が認定できないというもどかしい状況なのです。

日本国が想定する以外の状況が世界で起こっている

つまり、現在の日本が想定して構えている危機管理すべき場合として想定している状況は、残念ながらそのような認定がされるような状況が、少なくとも現在の世界情勢ではあまり起こらない類のものとなってしまっているところが問題なのです。

現在の、この日本における法整備として欠けている視点、これこそ、「日本に落ちて来るかどうか、または集団的安全保障の対象国であるアメリカの領土・領空を脅かすかどうかに関わらず、日本の上空(領空より外)を飛んでいくミサイルを見逃していいものなのかどうか」というものです。

そして、こうした、日本の上空を我が物顔でミサイルを飛ばしてくる国家に対して、その飛ばしている事実そのものに対する抗議の意志として、技術的にできるかどうかはともかくやる気があるのか、それを整備しておかなければ国家として舐められる(もう舐められっぱなしなのかもしれませんが)、ということなのです。

これは、個別的自衛権や集団的自衛権、及び国内警察権の行使とは全く別の論点となります。

ここまで書いて来ますと、結局領空領海外においても、まともな実験ではないことが明らかな国家の所業に対しては、国際警察権の行使の一類型として、少なくとも自国の上空にミサイルを飛ばすような国家があれば、叩き落とすなり何なり、きっちり問題視して適切に対応できる法制度や対応をしておくべきだと思います

トランプ大統領がここまで考えて、日本もきちんと考えてね、と宿題を与えたのかどうかはわかりませんが、少なくとも周辺国と連携して北朝鮮を封じ込めようとしている以上、このくらいの知的労働を担えないようでは国際社会における名誉ある地位を占めたいと願った日本国憲法の趣旨にも沿わないのではないかと思うものです。

法学徒として少々難しいかもしれない話になりましたが自国の安全や安心に直結する話ですので前向きな議論を期待したいと思います。

こちらからは以上です。

(平成29年11月7日 火曜日)

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